『連続暴姦』『真昼の切り裂き魔』とポルノでシリアスなサイコサスペンスを作ってきた滝田洋二郎監督が『サイコ』を彷彿とさせる本作にたどり着くのは当然の結果なのかも。ホテルで監禁された女性が異様な性の世界を覗いたり夜の海辺の寂れたホテルの風景は『赤い唇/闇の乙女』、ホテルの鏡越しに自分を見ている女性の視点が突然鏡越しに彼女を見ている人物の視点に変化するショットは『らせん階段』、終盤絶叫しかしないヒロインは『悪魔のいけにえ』と色々なホラーやサスペンス映画へのオマージュが散りばめられているのも嬉しい限り。
無料でホテルに招待された主人公の女性による能天気なドラマとその裏で支配人と称する男が監禁した女性に繰り広げる異常性行為が同じ建物で繰り広げられるサスペンスはハラハラさせられるし、その緊張感がゴルフクラブでの殺害で熱を帯びて風呂場での衝撃的な暴行シーンから一気に主人公を侵食していく展開は緊張と緩和を巧みに操る演出が決まっていて見入ってしまう。
でもドラマのピークはここまでで、あとは普通のハード系ポルノになってしまうのが残念。複数の女性たちが入れ墨を彫られ調教される絵面はすごいインパクトがあったけれど、男性一人でこんなに女性を管理するって絶対無理だよという突っ込みが勝ってしまってちょっと距離が出来てしまった。
ただエレベーターの異音の正体を示すショットなど恐怖演出の冴えは相変わらずだったし、脚本を手掛けた夢野史郎らしい「狂気は伝染して拡大していく」的なラストは不気味な後味を残して中々良かった。そして本作で助監督を務めた佐藤寿保が、夢野と組んで本作を更にヒートアップさせた過激な作品を次々と手掛けていくというのも感慨深い。
ちなみに真冬での撮影だったらしく、息は白くはないものの監禁されている女性たちは上半身裸で下半身はストッキングやタイツを履いているという珍しい状態に。ただそうした衣装が暗闇と光の映像とマッチしていたし異様な世界をビジュアル的に強調していて悪くなかった。