椎良

シェイプ・オブ・ウォーターの椎良のレビュー・感想・評価

4.7
恋という名の水流

〈元から声が出せない清掃員の女性イライザは、彼女の職場に運ばれて来た奇妙な生物と交流を持つ。惹かれ合う二人、しかし“彼”の周りで思惑は交錯する。
2人の逃避行の先に待っていたものは〉

性癖もジャンルも詰め詰め。
アカデミー賞多数受賞、ギレルモ・デル・トロ監督のサーチライト・ピクチャーズ作品。ファンタジー・ラブストーリーであるが、スリラー・ホラー要素も含まれている。

エログロ含め だいぶエグいものを見せられたのに、この満足感は一体何なのか。絵本を読み終えた様な温かみ。
美しい画の中で展開される、怪物と恋愛というアンバランスな要素が唯一無二。更に監督の性癖も社会的メッセージも詰め込んだ、究極の異色ジャンルミックスと言っていい。

主人公だけでなく、半魚人の造形や全体的な描写の細やかさも素晴らしい。文字そのままの「怪物」と、人間に潜む悪意としての「怪物」を両立させて描く手法に惚れた。ストリックランドはその背景や心的な混乱を重点的に描く事で、悪役ながらどこか同情させてくるキャラに。博士のキャラもすごく好きだ!
が、好みは激しく分かれると思います(笑)

マジョリティとして取り繕い今に縋るか、マイノリティとして自分を突き通すか。そのジレンマを人は生きている。
こんな世の中で、愛は様々な形で生きる糧となる───まるで水の如く。
椎良

椎良