ayammi

シェイプ・オブ・ウォーターのayammiのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

「パンズ・ラビリンス」の雰囲気でどんな感じになるのかとわくわく(怖いもの見たさ)していました。
が、
そんな期待?は裏切られて
観たあとのじんわりと生暖かい不思議な安定感があって、これは何なんだろうなぁと首を傾げながら映画館をあとにしました。

見終わった直後は
長かった❗という感想。

しばらく経って
何故何度も性描写があるのん?という疑問。

ふわふわと色んなシーンを思い出しながら
主人公をとりまく
3つの立場の視点があるような気がして勝手に納得をしています(笑)

1つめは、権力を欲しいままに振る舞うある種の敵役ストリックランドの姿。
鎖で繋がれたいきものを服従させたり、相手の意向など全く気にせずに主人公を性的対象として傍若無人な行為をする反面、
家庭内や上司との関係では自らが全ての支配者にはなりきれず、常に幼少時から愛するキャンディと痛み止めを噛み続ける。
成功という理想に向かって自らが正しいと信じて疑わないそんな姿に
多くの立場の人たちや世間一般の『先入観』を全部具現化したような人物だなぁと思いました。
名前もランクもわからない人間がやってのけたことに一気に不安を感じてキャンディぼりぼり噛んでるところに、やっと人間性を見た気がします。

2つめは
一見味方か?と思わせつつもどちらの立場でもないホフステトラー博士。
彼にとっていきものは豊富な知識の宝庫であり、得られる情報がどの国にとって利益をもたらすかは重要ではない。
そんな熱意がいつのまにか彼の命を危険にさらしてしまうのだが、主人公といきものの親交や彼とは違う熱意で逃亡をはかる主人公たちを力で止めるようなことはせず、観察をする。
そして彼は一番最初に真実を悟る。愛だの恋だの友情ではなく、、

3つめの視点が、
主人公の同居人であり親友のジャイルズ。
身体的な障害はないものの、世間の目からは区別されたり差別を受ける役目だが、
そんな彼の抱える悩みなど凌駕する勢いで主人公はいきものと愛を育んでいく。
飼い猫の無惨な姿に悲しみつつも混乱はしない。
主人公の性癖までわかっているからなのか、
衝撃のラブシーンでは驚きつつも暖かく応援しているかのように受け入れる。
一番共感できる役柄でした。

なぜ同じ性的なシーンを見せるのだろうか?という疑問は、ジャイルズの態度や主人公が自らの主張をするシーンをみて消滅しました。
種族の違う恋愛という寓話のような映画と見せかけているのかもしれませんが、
自分には立場の違う人たちの日常行為そのものをスクリーンという絵本に描いているように思えました。今でさえ語ることすら憚るような自慰行為、同性愛、障害者・黒人差別をさらっと演じきるキャストの方々に本当に心から拍手を贈りたいと思いました。

2018-08
ayammi

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