Sachiko

シェイプ・オブ・ウォーターのSachikoのレビュー・感想・評価

4.0
日本で100億円突破の興収を記録したエマ・ワトソンの「美女と野獣」。
ヒロインを若く美しいフェミニストの彼女が演じた瞬間に、野獣がイケメン(?)の王子へ変身した瞬間に…消えてしまうテーマについて、デルトロ監督が見事な解釈を与えてくれたなと感服でした。

「美女と野獣」がよく引き合いに出されているけれど、王子に会いに行くために声を失った「リトル・マーメイド」に対して、最初から声をもたないヒロインという対比がとても素敵でした。

中身を愛すれば外見なんて関係ない、と訴えたかった「美女と野獣」。
でも、心を愛すれば身体は愛する必要もないのか?
ディズニーでは身体を愛する作品なんて録れない(だろう)から、まるでディズニーのようなおとぎ話を大人向けに、少し観ることをためらうシーンも含めてリアルに録り直してくれたデルトロ監督には拍手です。

半魚人(の彼に、名前が付けられなかったのも素敵。名前を呼ぶ必要もないもんね)を躊躇や葛藤もなく、あまりにスムーズにイライザが愛していくので、「彼は人間ではないのに…とためらうプロセス、ないんだな」と少し不思議に思った瞬間もあったのですが、それさえも偏見、私の思い込みなんだろうか…と後に反省してしまうほど真っ直ぐで、あまりにピュアな作品でした。

光が当たらないところでも真っ直ぐ生きている人たちが主役。彼らがみんな幸せに、思い描いた人生を進んでいってほしいな…と願わずにはいられません。

作品賞&監督賞、本当におめでとうございます。
評論家の町山さんがWOWOWの中継で、涙ぐみながら「これまで散々アカデミーから無視されたカイジュー映画をリスペクトし、世間でもバカにされてきたオタクを愛する監督が撮った作品が最高の栄誉を獲得した。ウルトラマンもゴジラも闘える。ブラックパンサーもワンダーウーマンも、これからはアカデミーで闘い得るんです」と熱く語られていて、もらい泣きしそうでした(笑)。とっても意義がある素晴らしい受賞!
Sachiko

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