新品畳

シェイプ・オブ・ウォーターの新品畳のレビュー・感想・評価

3.7
シオドア・スタージョンの短編小説「不思議のひと触れ」を思い出した。
雌・雄の別個体の人魚と密会をしていた人間の男女が海岸で偶然出会い、お互いに惹かれ合っていく物語だ。
彼らは、お互いに憧れの対象として逢瀬を繰り返している美しい人魚について語り合い、そして、その"抽象的な美しいもの"を通じて心を近づけていく。人間への希望が感じられる美しい作品だ。

しかしこの映画はそんな希望など微塵に打ち砕く。とんでもないが現実社会を鑑みればごく自然な物語の展開を見せた。
人間よりも、より美しい存在との恋愛を選んだのだ。
しかも、それは異世界へのtrip(小旅行)ではなく、journey(帰路のない旅)を思わせるような結末を迎える。

アナと雪の女王のエルサが自罰的であり、自ら籠城してくれた"男性に生易しい時代"は終わろうとしているのかもしれない。
彼女(ら)は必要のないものとの共存を選ばない。
強靭な優しい世界を求めて旅を続ける。

とても美しい、時代を見せてくれる映画だった。
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