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シェイプ・オブ・ウォーターのpirshkiのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

ギレルモ監督「シェイプ・オブ・ウォーター」
The Shape of Water 
第90回アカデミー賞4部門を受賞してFB上でもほぼ連日誰かしらがレビューを投稿してちょっとしたブームを起こしているシェイプ・オブ・ウォーターですが
ギレルモ監督のこの物語に込めた本心は、そんなマスメディアを巻き込んだ熱狂じゃなくて、もっと狭い範囲の、でも切実にこの物語を求めていた人達へのささやかなラブレターなのだと思うのです

この映画はいじめられていたり、褒めてもらえなかったり、仲間に入れてもらえていない、自分と同じの、いま現在の観客のために作っています。
物語はフィクションですが製作者や役者たちが込めた思いや怒りや願いは本物であり、世の中に生きにくさを抱きながら日々を送る人を勇気つけたり、あなたはこれでいいんだよ、と肯定してあげる気持ち、
もっと言えば、このまま世界に押しつぶされてたり、自ら死を
選んだりしちゃ決していけない、という”あなただけに届ける物語”なのだと思います

社会的マイノリティへの愛情、とか”mee Too”と並んでポリティカルコレクトネス(社会的公平性)略してポリコレ、などというアカデミー賞審査員受けの良い政治的キャッチフレーズで括って熱狂してほしくないのです
そんなことをしたら内気でシャイな本当の観客や弱き人はきっとステージ上から引っ込んでしまって、届けたい言葉も届かず、聞きたい共感の声も上げられなくなってしまうことを心配するのです

ここからネタバレ気味のラストシーンの考察に入ります
映画未見の方はどうぞ観るまで我慢して下さい 
映画をご覧になった方はどうぞ御意見、御異論を聴かせて頂ければ嬉しいです



〇〇

 〇 〇

  〇

〇    〇

   

   〇

最初と最後のシーンは深く美しい青緑色の水の中で
ループのようにつながります
水中の建物の中、ナレーションの声がかぶさりながら
カメラはドアを抜けて 室内へ浮遊する椅子や家具の中で
眠る女性:イライザ、 やがてアラーム時計の音に
目を覚まし現実に戻るファーストシーン、

そして最後に主役の二人が水中の中で迎えるラストシーン、
そこまで観ていた観客には、このナレーションは
イライザの友人の隣人のゲイの画家ジャイルズの声だと
わかります 
でもどちらのシーンでもジャイルズは水中の世界のことは
知らないはずです 
彼はラストシーンでは陸の上にいましたよね

ではこの物語は現実ではアンハッピーエンドで、
あのナレーションは 二人のその先はこうであって欲しい、
というジャイルズの妄想だったのでしょうか?
でも、それだとファーストシーンの言葉が意味するところも
不明だし、単なるイライザの夢(今後の物語の予知夢?)
のような位置付けになってしまい面白くないし救いも
ありません

僕にはラストシーンが物語の最初にループして、
水の中の世界でその後のイライザが幸せに居場所を得て
救われた、という落着がほしいのです・・・ 
困ったなあ・・・、
と数日他の人のレビューを読んでもやもや悩んでいました

そしてしばらくすると、もう一つの解釈が浮かびました 

画家ジャイルズも半魚人の彼に水の中の世界にいざなわれた、という解釈です
頭に半魚人の掌を置いてもらって得度(髪の毛が再生する)
したエピソードは伏線だったわけです
2人ではなく3人になった! 
ジャイルズは水の中の世界でもイライザの隣人のまま暮らす
ことができナレーションで幸せな二人の暮らしをレポート
しているのがこの二つのシーンである、
これでめでたく問題点も解決QEDというわけです

いかがでしょうか? 
ちょっと突飛だし、他のレビュアーも デルトモもダグも リチャードも言及していませんが 
この優しい物語には
こんな解釈が一番ぴったりくると僕は思うのです