蛇々舞

シェイプ・オブ・ウォーターの蛇々舞のレビュー・感想・評価

4.3
スリービルボードと2017年を争った印象のあるシェイプ・オブ・ウォーター。

2作を観比べて思ったことは、作家性の勝利だったな、ということだろうか。

昔々、で始まるお伽噺である。
プロットは美女と野獣ほぼそのまま。
それを、美女ではない女性と野獣そのものな男(?)の二人を中心に、マイノリティの取り巻く環境下で進行させる。

さよう、これはマイノリティの物語だ。
身体障害者に、ゲイ、家庭に不和を抱えた黒人女性、ロシアのスパイ──なにより、非人間。
最後に敵となる人物でさえ、男・夫としての理想を保つため無理をする、可哀想なヤツだったりする。

完璧な善人、悪人は登場しない。
誰もが必死に生きていて、その眩しさにも愚かさにも、等しく慈愛の眼差しが注がれている。
何が魅力かと言えば、作品に通底する、そんな暖かさがそうだろう。

クライマックス、作中で上映されている映画はカーク・ダグラス主演のスパルタクスだ。
彼が剣闘士を率いて反乱を起こしたように、シェイプ~の登場人物らは、偏見に、体制に戦いを挑んでいくのである。

寓話的で、詩的な映像の連続。
それにリアリティを感じるのは、役者陣の芝居あったればこそだろう。

監督の創造力と、美術、音楽、演技。
その他もろもろが渾然一体となって、圧倒的な芸術性を獲得しているのである。

映画、という媒体だからこその表現を、ここまで突き詰めて完成させたのは素晴らしい。

個人的には、好みで言えばスリービルボードに軍配が上がる。
芝居の熱量、密度で言えば、間違いなくそちらが上だからだ。

しかし、あくまで総合芸術という点では、こちらが勝る。

“それから”に思いを馳せたくなる終わり方も、最高だ。
蛇々舞

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