ゆ

シェイプ・オブ・ウォーターのゆのレビュー・感想・評価

4.6
現代における神話のような、壮大な愛をテーマにしたおとぎ話。
美しさに圧倒された。

それと同時に、イライザとジャイルズ、イライザとゼルダの友愛の物語。
友愛が性愛を超える瞬間も見流ことができてよかった。観賞中は意識していなかったけれど、主要人物は障がい者・異形・ゲイ・黒人という、1960年代では今以上に奇異の目で見られていたマイノリティたち。

孤独と愛。
本当に愛は全てを超越するのかもしれないと、信じられる物語。
昨日見た『彼女がその名を知らない鳥たち』で黒崎が十和子のことを「孤独が服を着て歩いてる」と揶揄する場面があったけれど、孤独な人同士って確かに異常に惹かれ合うし、身に覚えのある人も多いように思う。
イライザもそうだけど、隣人のジャイルズが冷蔵庫にまずいキーライムパイをいくつもため込みながらバーに通ったのに、邪険に扱われるシーンも切なかった。1960年代はあんなものか。悲しい。
悪役ストリックランドもある意味では孤独だった。悪役の描写が一面的でない作品は好きだなあ~。

”When he looks at me, He doesn't know how I am incomplete, he seize me cause I am.”
「彼は不完全な私じゃなく、ありのままの私を見てくれる」

『美女と野獣』のアンチテーゼだとは知らなかった!そういわれると、冒頭の「ハンサムな王子様の時代が終わりつつあったころ」というナレーションも納得できる。
「声を失った(もともとないけれど)王女」という冒頭のジャイルズのナレーターや、泡を吐きながら海底に沈んでいくイライザの姿には、人魚姫を思い出した。

魚人(アセット?)が最初は異形に見えるが、物語が進むにつれて美しい生き物に見えてくる、というのは観客の見方として一般的なのかもしれないけど、もし彼に知能や認識している証が見られなくてもそこまで感情移入できたのかな~と思った。彼は生きていて意思がある生物として描かれていたけど、まあそうじゃなかったら恋にも落ちずに生体実験の対象に自動的になっていたのかな。
性行為とかの描写にウッとなっている人もいるっぽいけど、服を着ている状態が異常な彼にとってイライザの素肌に触れたいという思いはすごく正直だと思ったし、その延長線上なのかなと思った。

作品全体を通しての色遣いや世界観、音楽やタップ、全てが好みだった。
絶対に映画館で見るべきだった作品。オープニングから溢れる映像美。直後のイライザのルーティーンに見える、家具やインテリアのセンスも大好き!朝の湯舟の水、ゆで卵を作る水、ラボの水槽、コップの水、バスの窓に張り付く水滴、どしゃ降りの雨、雨漏り、海。キャデラックのティールは青緑ではない。

”x+y”での苦悩する母親役、そして『ブルー・ジャスミン』でのケイト・ブランシェットの妹役がすごく好きで印象に残っているんだけど、手話や顔の表情、そして体全体で繊細に表現するサリー・ホーキンス、やっぱり名女優だ…。

ミュージカル調になるところだけ、魚人(エイブサピエン?)がチープに見えてしまって、二足歩行の人型をしているところが御都合主義に感じられて冷めたけど。
あと首の傷はなんだったんだろう〜その伏線も回収されるのかと思ってた。

"Unable to perceive the shape of you, I found you all around me. Your presence feels my eyes with your love. It bundles my heart, for you are everywhere. "
「あなたの姿がなくても、気配を感じる。あなたの愛が見える。愛に包まれて、私の心は優しく漂う。」

ゆで卵食べたくなった🥚
ゆ