平田一

シェイプ・オブ・ウォーターの平田一のレビュー・感想・評価

3.8
唯一、被写体を捉える際のカメラワークが不満でした。被写体一人に絞った視点が必要不可欠な場面があるのに、別の一人を入れたせいでその焦点がぶれた気がして、何というか素晴らしいのを、そこで台無しにされた気分。映像の色合い自体はこれ以上ないものだと思うし、ほぼ完璧だとは思う。でも1割がダメだった(それがあまりに大きすぎた…)。

ただ確実に言えることは、この映画はホントに良かった。今まで見てきた映画以上にこれほど大きなラブストーリーは、ましてや異形の半魚人とのラブストーリーは多分知らない。"まとも"を見事に履き違えるバカ上司への皮肉も見事で、それが一層ラストシーンの爽快感を高めてくれた。

イライザ役のホーキンスや、半魚人役ダグ・ジョーンズ。ジェンキンスやスペンサーに、スタールバーグはグレイトだし、憎まれ役のマイケル・シャノンもあくまで人間に徹していたから、蓄積していくフラストレーションなんかがスッゴく共感できた(掃き溜め職場に左遷させられたことへの憤りなんかスゴい)。

"まともな男は失敗しない"…これほどバカげた主義主張はクソッタレな狂言だ。だからそれを否定していく皆の姿はカッコ良かった。スタールバーグの嘲笑然り、旦那にぶちギレるスペンサーに、シャノンに一発食らわすジェンキンス。そして勿論二人の最後。

まだ言い足りないけど最後に。素敵な映画を、ありがとう―。
平田一

平田一