あでゆ

あゝ、荒野 後篇のあでゆのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
4.5
プロデビュー戦を終えた後、トレーニングに打ち込む沢村新次と二木建二。因縁のある山本裕二との試合が決まって一層トレーニングに励む新次は、建二が自分の父親の死に関わっていたことを知る。一方の建二は図書館で出会った君塚京子に心惹かれるが、孤独を消せずにいた。そんな自分を変えようと、彼は兄弟のような絆で結ばれてきた新次と決別することを心に誓う。

その道に栄光は無い、いくらもがいても決して晴れることはないとわかっていながらも、”何か”に「光」を感じてひたむきにもがき続けるさまを涙なしに観ていることはできない。『あゝ、荒野 前編』でそれぞれの登場人物を照らしていたはずの「光」は『後編』で一様に虚像を示す。

復讐という目的に駆られていた新次を突き放すように、『後編』では全てが彼に無関心となっていく。自分に期待していると信じていた先輩は復讐敵に生活を支えられ、女には逃げられ、復讐を達成してもそこに感動はなく、ただ目の前で力なく敵が敗れるのみである。本当に殺す気でいたのは、本当に戦っていたのは自分のみで、周りの全てはただボクシングを、試合を楽しんでいるだけだということに気づかされた新次は闘争心を喪ってしまう。そんな彼に再び目的を、光を与えてくれるのはバリカンだ。後編は新次が光を取り戻す物語であると同時に、バリカンが光を放つ物語でもある。
バリカンは新次を求め、恋い焦がれる。新次を越えるために同じ師匠ではダメだと悟り、バリカンはジムを変えるが(政治的な理由は合ったがそんなことはどうでもいい!)、それを裏切りと捉える彼らとのすれ違いがもどかしい。しかしその苦労も甲斐なく、準備が整う前に彼らには唐突にも”夢の終わり”が訪れてしまう。もう今すぐに、2人は戦うしか無いのだ。
結末となる試合。2人の輝きに「片目」やヨシコを始めとする全ての人間が引き込まれていくラストシーンはこの映画の白眉である。それぞれが文字通り目をかっ開いてその光を受けきろうとし、その麻薬のような魅力を求めてある言葉を叫ぶさまは圧巻の極みである。僕自身もこの試合から目を背けることができないでいた。

技術的な感動を付け加えると、健二の童貞喪失時の省略の仕方がすごい。女のほうから急にキスした瞬間ホテルでSEXしてるっていうのは色々想像を掻き立てる演出だし、急に燃え上がって周りが見えなくなっているというのがよくわかる。
あと個人的には『前編』にあった自殺サークルのノイズがないのが個人的には好評だった。ただ余計な登場人物が増えたというか、父親とかテロのくだりもあんまりいらなかったと思う。
『前編』に比べるとかなりミニマムな作品になっていて、好きだったジムの連中だったりの描写だったり、ヨシコの存在感はかなり薄口になっている。その分しっかりと2人は描かれているのだが、脇を囲む俳優の演技も抜群なだけにそこは少々物足りなくも感じた。
あでゆ

あでゆ