おもち

あゝ、荒野 後篇のおもちのネタバレレビュー・内容・結末

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

人生の、というか 生き方のベクトルが同じ方向を向いていないと一緒にはいられないのかな。
それが逆方向を向いてたり交差したり同じ一点を指してたりするのが 敵対するとか憧れるとか恋とかってことなのかな。
でも同じ方向を向いていても重なっているのか平行なのかでまた変わってくるよね むずかしい。

正直、わたしの苦手なものが詰まってる映画で、観始めた瞬間からずっと苦しかった。
やり直そう、やり直せるって思った次の瞬間には、もう負けてる。届かない。わかっていて届かないのと届いてない事すらわかってないのはどっちがしあわせって言えるんだろう。わたしは、苦しくてもいいからわかってたいって、そう思えるだろうか。

菅田将暉ももちろんめちゃくちゃ良かったけど、ヤン・イクチュンがもう…思い出しただけでかなり苦しい。『息もできない』も良かったけど、今回も凄かった。新次になりたいって言ったシーン以降、涙腺が崩壊した。もう殆ど恋みたいな、それより強いかもしれない、多分愛みたいな新次への気持ち、わからないけど、簡単にわかるって言えないけど、でも、わかるよ。

新次とバリカンとボクシングと、あとその周りのほんの少しの背景を描くだけでも映画としては成立すると思うけど、蛇足かなと思ってしまうようなところもきちんと入れて、前編後編に分けて、しかもそれぞれ2時間半ほどもかけてちゃんと全部作り上げたってところが、この映画をただの映画と言ってしまうには惜しいものにしていて、そこにもすごくグッときた。

それから、同性として芳子のこともすごく考えた。裕二との試合以降、芳子の気持ちがすごく痛かった。芳子だけじゃなくて、新次の母親の京子、芳子の母親のセツ、それから自殺研究会の恵子も、全員嘘つきだけど嘘はついてなくて、そこがとても 女 だな、と思った(ただラブシーンのあった3人が3人とも 痩せ型なのにおっぱいめちゃ大きいのはなんか…これが現実??ってなった)。

名言を社長に、しかも結構適当な感じで言わせるのは何か意図があってのことなのかな。

クライマックス、いつものわたしなら観ていられないって思うようなものだったけど、これは、これだけは観ないといけないと思って全部を遮断して観た。なんで泣いてるのかわからないけど泣けて、憎めなくて死んでしまったバリカンと、憎めなくて殺してしまった新次、これはもうラブシーンで こんなかたちのラブシーンがあるのかと思ったらもう なんなんだとしか言いようがなかった。ゴングが鳴ったとき、わたしの耳の奥と胸の奥からゴングと同じ音がした。

こうやって書いたけど、そして当たり前だけど、わたしはきっとこの瞬間以上にこの瞬間の気持ちになることはないだろう。きっと忘れる。忘れるけど、なかったことにはしたくなくて、少しでも覚えておきたいし思い出したいから、めちゃくちゃだけど文章にして 文字にしてのこしておきたくて書いた。
万人にすすめたい映画かと言われるとそうではないけど、気になってる人は是非観てほしい。
おもち

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