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ボヘミアン・ラプソディのsaekoのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.2
音楽は光だ。東京ドームで5万人の観衆に囲まれて、強烈なスポットライトを浴びながら、銀髪を輝かせて演奏するブライアン・メイとロジャー・テイラー、そして力強い歌声で会場を圧巻する新たなフロントマンであるアダム・ランバートを観ながらそう思った。

音楽ファンというわけでも、クイーンに詳しいわけでもない自分が、ステージパフォーマンスに純粋に魅了され、高揚し、ライブ当日から数日が経った今でも、クイーンの曲を聴きながら元気づけられている。

ボヘミアン・ラプソディは、そんな心が煌めく音楽体験を再現してくれる映画だった。

ストーリーラインは極めてシンプル。ロンドンのバーで出会った音楽を志す若者たちが、瞬く間にスターダムをのし上がっていく。
もしこれがフィクションの物語だったら、捻りがなく退屈だと感じたかもしれない。しかしこの物語の主人公はクイーンである。最高の素材にはシンプルな味つけで充分ということだろう。
王道の展開をなぞりながらも、魅力溢れる楽曲に彩られながら、最高のライブシーンのカタルシスへと駆け抜けていく。

私はきっと今後の人生で有名になることも、歴史に残るような何かを残すこともないだろう。私がステージに立つ側に回ることは一生ない。
しかし、参加することはできる。舞台の観客として、パフォーマーと共に歌を歌い、ビートを刻み、歴史の目撃者となりながら、作品の一部になることはできる。

レディオ・ガガのメロディーに合わせて手を叩くライブ・エイドの観客たちを観ながら、数日前の自分を思い返し、そう思った。

フレディ・マーキュリーもジョン・ディーコンもいなくなってしまったけれど、今なお進化を続けるクイーンの伝説の旅路に、僅かながら参加できたことを誇りに思う。
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