Mariko

ちはやふる ー結びーのMarikoのレビュー・感想・評価

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
4.5

「1000年前の歌が、
今のあなたたちにも届いたように。」

この一言で、涙が溢れた…

人間は一瞬の積み重ねでしか、
生きることができない。
でもその「一瞬」は、
「想い」によって保存できる。
それは、消えて亡くならない。
むしろ強く爪痕を遺しながら、
いつまでも紡がれる美しいものになる。

ただの青春映画なんかじゃない。
映像化することに意味がある、
素晴らしい映画だなと思いました。

音速の領域での競技かるた勝負、
苦しく恋焦がれた想いが閉じ込められた
1000年前の和歌、
俊速でかるたを弾くシーンと、
スーパースローでかるたが舞うシーンと、
相反するものが、共存する映画。

過去と未来、
瞬間と永遠、
擦り減る時間と創り出す時間、
その間を紡いでいるのは、
人間らしい感情。

恋、焦り、嫉妬、期待、比較、
愛、悲しみ、迷い、勇気、後悔…

ひとりの人の中で生まれている、
身勝手な感情なのにも関わらず、
青く、向こう見ずで、全力だからこそ、
こんなにも周りを巻き込んで、
伝播して、周りを色付けていく。

感情は目に見えない。
なのに、
こんなにも彩度濃く見せつけられる。
色んな感情が水彩画みたいに、
ふんわりふんわり広がっていくみたいで、
美しかった。

彼らのような輝かしい青春なんて、
わたしは、おくれなかった。
捻くれているわたしだから、
そういう映画をみると、
いつのまにか俯瞰してしまって、
「はいはい…いいですね…」
となってしまう。
でも、「ちはやふる」は、
そうならなかった。
彼らの全力で今を生き抜く姿を、
鮮やかに見せつけられて。
その熱量に圧倒させられて。
まるで同じ加速度の中で、
自分も生きているかのように、
その場にいるかのように、
感じてしまった。

例え輝かしい青春が、
わたしの過去には無かったとしても、
全く否定感がない。むしろ、
自分の過去は掛け替えのないものだと、
認識させてくれました。

リメンバーミーに近しい、
忘れることなんて決してできない、
過去の尊さと過去の作り方、
それらの自分への刻み方を、
教わっている気持ちになりました。
Mariko

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