マクガフィン

坂道のアポロンのマクガフィンのレビュー・感想・評価

坂道のアポロン(2017年製作の映画)
3.1
高校生の友情や恋とジャズとの出会いを活写した青春映画。原作未読。

音楽で交わる関係や近距離的でBLを若干漂わせるような勉強ができる転校生(知念侑李)と不良(中川大志)で性格の真逆な男同士の絆を育んでいく友情とそれを憧憬の眼差しで見つめる不良の幼馴染の女の子(小松菜奈)。その世界に入れそうで入れない小松の三者三様の恋愛のすれ違いの三角関係は女性作家独自の女目線が垣間見れるプロットは普遍的で少女漫画特有の青春映画の範疇に納まるのだが、三木監督の自然背景の美しさの中に役者を嵌め込むシーンや地下の仲間だけの隠れ家的スタジオ、凸凹男コンビの違和感も居場所がない者同士が音楽と共に惹かれあうことの説得力などの所々のシーンの演出が巧みに。特に机での指ピアノと鉛筆ドラムのセッションは音楽が聞こえるようでもあり、展開の暗示にもなっていて良い。

文化祭でピアノとドラムのジャズセッションがバンドを圧倒する描写は、バンドをキラキラ映画に見立てたようなメタファーにも感じて監督のこだわりも垣間見れて好感。
また、主演の男2人が喧嘩で揉み合うシーンで、男2人が影になりバッグで見ている小松や他の生徒は光が当たるシーンは、文化祭のセッションとシーンと光が対象になり、友情関係とセッションの演出を同時に光で描写することが上手い。
だが肝心の演奏は悪くないのだが、中川のドラム演奏は肩に力が入り過ぎていることと肘が上がり過ぎていることがオーバーアクトで素人臭くて残念に。頑張ってドラムの練習したことは伝わるのだがドラムの演技や演出も演奏と同じぐらいに重要で、そこがお粗末になっているのは如何なものか。

三人の関係も微妙なチグハグ感があり、身長差があり過ぎて違和感が大きく(特に知念と小松)、中川はドラムも演技もオーバーアクトで他の2人と演技の温度差が大きく、小松の抑えた演技で方言も違和感なく聞こえて良いのだが、如何せん隠し切れないモデル出身の美貌と身長が所々の「待ち」や「踏み出せない」演出の違和感にも。
また、高校生が突然音沙汰なく失踪した理由が弱く、またその後の経済が全く描写ない脚本不足も。

ラストの静観から一歩踏み出す女性の成長譚も同時に絡めて描写する上手さは三木監督ならではだが、少女漫画と映画の相性の良くないことと脚本の問題が残る邦画の問題点も多く垣間見れる結果に。
女性目線が多く、女性の方が共感して楽しめる作品と感じたのだが、どうだろうか。