森崎

坂道のアポロンの森崎のレビュー・感想・評価

坂道のアポロン(2017年製作の映画)
3.0
セッションの力ってとても不思議なもので、トランペット、ウッドベース、ドラム、ピアノと音が増えて重なるごとにより一層空間の厚みが増していく。皆が皆の音に耳を傾けながら己の出せる音を笑顔でぶつける様は最高だ。
そのセッションが行われた場である地下室のスタジオの美術の再現度が自分の記憶しているものとほとんど同じで少し鳥肌が立った。

正直なところ、アニメ版が自分の中で凄くグッときていたこともあって評価が良いとはいえ観たいけど観るのが怖くもあった作品。律っちゃんのあの芋っぽいんだけど純朴で可愛くて守ってあげたくなる役は「溺れるナイフ」やドコモのCMで洗練されたミステリアスな姿が印象的な小松菜奈じゃ難しいだろう上白石萌音イメージだ!と思っていたりジャニーズの子がいるのか…と食わず嫌いをしたりとまごまごしていたら撮影時に軍艦島かどこかで起きた船の事故の報で味噌がついたような気になり興味が離れてしまったけれど、なかなか個々の演技も光って良かった。
学祭でのセッションはお互いにセッションできる嬉しさを爆発させるように引くことを知らず前に前にと音を鳴らす姿が印象的。ワルツだから6バスっていうのかな、あんな熱いサムデイは初めて聴いた。

知念侑李と中川大志と小松菜奈、この三人の俳優のバランスが良い。知念くんの声が洋物吹き替え声なのがたまに気になったけど。
ただ、どうしても駆け足にならざるを得ない映画の長さでは役者の演技に見合うようなキャラクターの魅力がこの脚本では出せていなかったような印象。もっと省くところは省いても良かった気がするけどボン、君はもっと出せるはずだ。

三人組、というのが私が好きなもののひとつでもあって、それは「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「ウォールフラワー」や「時をかける少女」のような絶妙なバランスで成り立っているものも多い。そしてこの「坂道のアポロン」ではその三人組に加えて淳兄と百合香先輩が絶妙に関わったうえで成り立っているのが素晴らしく、そして切ないのですね。映画でも折角淳兄にぴったりなディーン・フジオカを持ってきてこれまたしっくり来るチェット・ベイカーみたっぷりに“BUT NOT FOR ME”を歌わせたのに百合香さんの改変は難しかったのだろうかあまり良くなかった。確かに律っちゃんを小松菜奈にしたことで原作とは別ベクトルの美人を用意しなければいけないけれどお嬢様という設定は変えられない、ということだろうけど真野恵里菜は…違うんじゃないっすかね…(ごにょごにょ)
森崎

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