原田眞人が監督・脚本を務めた、2018年公開のサスペンス・ドラマ。
・私はSMAP世代ではないのであくまで「キムタク」という一般的なタレントイメージしかありませんでしたが、こうして2時間掛けてじっくり見てみるとその凄さが改めて理解出来る。何より彼の役者としての華と計算された演技プランが本作をしっかり「木村拓哉主演作」とたらしめている。
・仮に私が罪人だったするならば、本作の沖野と『96時間』のブライアン・ミルズにだけは何があっても尋問されたくない。
まずは「木村拓哉×二宮和也」という”歴史的”と言っても過言ではない豪華共演が本作の大きな魅力です。ただこれは単なる客寄せキャスティングではなく、むしろ最上と沖野の「”法と正義”を挟んだ鏡像関係」という作品の根幹を為すテーマを、同じジャニーズという立場でありながらも佇まいから演技トーン、声質に至るまでが正反対なこの2人の共演によって画的にもドラマ的にも象徴されていると思います。二者の立場や心境を端的に示す演出も含め、特に前半部は非常に興味を惹かれました。ただ、主に後半からですかね、具体的には松重豊演じる闇社会のブローカー・諏訪部が登場する辺りからでしょうか、物語の軸や方向性が徐々に散漫になってくるような印象を受けます。この諏訪部でさえかなり浮世離れした人物なのに、そこに輪を掛けて浮いているのが芦名星演じる運び屋の女、何しろ役名が「運び屋の女」ですからね。要するに私が引き込まれた前半部の社会派サスペンスからは少し距離のある展開へと進んでいき、私はそこが若干肩透かしに感じてしまいました。特に残念なのは前半であれだけ取り沙汰されていた件のあまりにぞんざいな結末、あれはもはや開き直ってますよね（笑）。散漫と言えば主人公・最上が熱く訴えかけてくるインパール作戦云々も、現代の社会派映画としての訴えにはなり得ているもののやはり本筋の件とはあまり関連性が見出せません。個人的には登場人物や設定をもっと削ぎ落とした上で、法を遵守・行使する立場である検事達が葛藤する「日本社会における正義の在り方」というメインテーマこそを全面展開して欲しかったですね。ただ本作は主演2人に吉高由里子を加えた三者の演技合戦だけでも十分過ぎる見応えがありますし、今後は原田眞人にも注目していこうかと思います。まずは『ガンヘッド』！
『ヘルドッグス』かぁ、どうしようかなぁ。
