デッカード

狂覗のデッカードのレビュー・感想・評価

狂覗(2017年製作の映画)
3.5
ある事件をきっかけに中学校の教師5人が、体育の授業中に教室で秘密の「生徒の持ち物検査」を始める。

映画はほとんどひとつの教室から出ることなく展開する密室劇。
小さな伏線がばら撒かれ、それがまるでパズルのピースが揃うように中学生たちと教師たちの事実をあぶり出していく。

中学校という誰もが経験したことのある独特のムードに包まれた閉鎖空間の中で、少しずつ中学生たちの実態が浮き彫りになっていくストーリーはスリリングだし、それ以上に不気味で不穏なムードが漂い続ける。

5人の教師たちも社会が期待するような聖人君子ではなく、業の深い生身の人間として描かれていて、一応主役はいるのだが単純な善悪で判断できるような人物造形はされていない。
むしろ教師のほうが狂っているのかも、とさえ思わせる。

教師の過去と教室で起こっている出来事の全貌が明らかになり観客が納得したのも束の間、すべての伏線が想像だにしなかった衝撃的な結末へと収束していく展開には驚愕した。
これは本当に起こっていることなのか?もしかして、すべて誰かの頭の中の妄想なのではないか?という疑問すらわいてきた。

全編ザラザラとした映像が神経を逆撫でし、学校の人間ドラマなのにまるでホラーのような肌感覚で異様なムードに飲み込まれた。
短編の小作ながら、残酷で行き場のない底知れぬ恐怖を感じさせる佳作。
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