半兵衛

天国はどこだの半兵衛のレビュー・感想・評価

天国はどこだ(1956年製作の映画)
3.0
スラム街を牛耳る暴力団に挑むアウトロー木村功(役名は健!)といういかにもな図式のやくざ映画なんだけれど、まだやくざ映画のフォーマットが完成されていない時期に作られたため「こんな設定必要?」と思える部分が結構あって微笑ましい珍品に。

全然強そうに見えないし他の映画同様鬱屈してばかりいるのになぜかスラム街の子供達から尊敬される木村功もあれだけど、それ以上に木村功に何度もボコられる威厳もへったくれもない本来は悪役である暴力団のあまりの弱々しさに苦笑。加藤嘉の組長も威厳0で悪役としての存在感が皆無なので見ていて可哀想になってくる。

とはいえスラム街の生々しい描写はそこで暮らす子供達の荒れた姿もあいまって迫力があるし、そんな荒んだ生活をしている街の住人たちを救おうとする医師を演じる沼田曜一の真摯な医者ぶりも見ごたえがある。そしてこんな荒れた町に住んでいるのに上品なヒロイン・津島恵子の存在感、『たそがれ酒場』といい『七人の侍』といいこの人が演じると汚れた女性も品と優しさのある女性になってしまうな。あと無気力な街の住人を悲哀をもって演じる織田政雄の素晴らしさ。

『悪の力』を思わせる殴り込みシーンも印象的。
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