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リバー・オブ・グラスのaoaominamoのレビュー・感想・評価

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
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白馬の王子様なんてそうそうやって来ない。彼女の前に現れたのは、青い車に乗った、強盗する勇気もなければ高速道路の料金所を突破する勇気もなくて、見てるこっちからしてもいらいらするくらいヘボい男である。ふたりの乗る車から見えるつまらない街並みを、劇伴の無骨なジャズドラムがさらに灰色に染め上げていく。
このどこにも行けない日々は、彼女が男を車から蹴落とすことで、その円環から外れていく。この映画は終わることで始まっていく。最後のカット、彼女だけが乗った車の前には青空が広がっていて、行き先がわからないこそ、そしてここで映画が終わるからこそ、彼女はどこへでも行けるような気がした。
この映画は、ジム・ジャームッシュ「パーマネント・バケーション」と同じような、「"ここ"から"ここ"への物語」が大きな部分を占めている。(しかも両作とも両監督の初長編作品である。)しかし「リバー・オブ・グラス」は、着地点が真のopen-endである、つまり行き先が決まっていないことで、より大きな解放感や希望を与えてくれる。彼女はもう決して"ここ"には戻ってこないのだ。
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