『BPM ビート・パー・ミニット』
ロバン・カンピヨ監督
2017年公開 フランス
カンヌ国際映画祭第6回クィア・パルム賞受賞作品。
鑑賞日:2013.04.13 u-next
エイズ患者やHIV感染者に対する差別に抗議し、政府や製薬会社に抗議を続けた団体「ACT UP−Paris」のメンバーたちが命を懸けて闘う姿を描いた作品です。
第70回カンヌ国際映画祭でグランプリと国際映画批評家連盟賞とクィア・パルムのトリプル受賞しています。
エイズ患者、HIV陽性者、HIV陰性者だけどACTUPの主旨に賛同して運動に参加する同性愛者たち、彼等と距離を置く周囲の人たち。
一人ひとりがかかえる様々なエピソードが浮き彫りにされます。
内容が内容なだけに面白いとは言えませんが色々なことを考えるきっかけとなる作品です。
【Story】
司会者が討論会の挨拶をしている舞台袖で何人かの若者たちがヒソヒソ話をしています。
開会の挨拶の途中に舞台袖で待機していた数人の若者たちが笛を鳴らしプラカードを持ち、
舞台に乱入し会場は騒然となります。
画面変わって。
大学の教室で1人の男が「ACTUPにようこそ。我々はニューヨークのアクトアップに続いて1989年に発足した」と若者に語りかけている。
ナタン(アルノー・ヴァロワ)は数名の新メンバーといっしょに説明を受けている。
エイズが発生してほぼ10年経ち若者たちの間に被害が広がっているにもかかわらず政府も製薬会社も対策に本腰を入れないことに苛立った若者たちが始めた運動です。
メンバーの中には命の時間が限られているHIV陽性者も数多く加わり、政府や製薬会社の態度にしびれをきらし苛立っていました。
今回の議題は先日の製薬会社の講演会に突入した活動(冒頭のシーン)が最悪だったとソフィー(アデル・エネル)が報告していました。
メンバーの一人が合図を勘違いしたために予定よりも早く会社の責任者に血玉を投げつけてしまったからです。
しかも別のメンバーがその責任者に手錠をかけたこともやり過ぎだと彼女は主張します。
しかし、ショーン(ナウエル・ペレス・ビスカヤール)や彼の仲間は効果があったし過激なことをしなければ相手に通じないと言います。
ナタンはHIV陰性ですが積極的に活動に参加していきます。
ある日彼らはメルトン製薬に忍び込んでオフィスに血玉をまき散らし新薬の治験結果を早く公表するようにと訴えたり、授業中の高校生の教室に乱入してHIVから身を守るためコンドームの使用を訴えてコンドームを生徒たちに配り始めました。
ナタンとショーンは恋に落ちます。
ショーンはナタンに16歳のときに数学の教師との初体験ででHIVに感染したことを告白します。
毎週一回開かれるミーティングでは様々な議題が検討されますが必ず過激派と穏健派とがやりあうことになります。
ナタンと同時期にACTUPのメンバーになったジェレミーはミーティング中に倒れ鼻血を出して入院しました。
ジェレミーはHIV陽性で急激に体調が悪化し亡くなりました。
ショーンの体調も日増しに悪くなり活動にも参加できなくなります。
ナタンはショーンに一緒に住もうと言いますがショーンは家賃を払えないことを気にしていました。
「一緒に生きたい」とナタンは彼を説得して部屋探しを始めましたが、
ショーンの体調が悪化して入院することになりました。
病室にやってきたナタンはショーンを抱きしめます。
体調がよくなったわけではありませんがショーンは退院して新しい家に運ばれました。
彼の母も献身的に介護しますがとてもつらそうな様子にナタンは心を痛めます。
ある夜ナタンは起き上がり注射器に薬を入れショーンの点滴に注射針をあてがいました。
夜があけるとナタンはショーンの部屋に入り「ショーンが死んだ」と母親の眠っている部屋に向かい叫ぶのでした。
「こんなに早く」と部屋から出てきた母親は呟きました。
享年26歳。
ショーンが亡くなったという知らせを聞いてACTUPのメンバーたちが次々とやってきました。
チボー(アントワーヌ・レナルツ)はメディア向けの声明文を考え皆に意見を求めました。
ショーンの母は「勇気について書いてほしいわ」とチボーに要望しました。
生前から、ショーンは自分の遺灰を保険会社に投げつけることを望んでいました。
葬式が終わったあとメンバーたちは保険会社のパーティー会場に乗り込んで遺灰をテーブルの上に撒き散らかしました。
ナタンは以前から彼に好意を示していたチボーを家に誘い激しく体を重ねましたがナタンは泣き崩れ、チボーは懸命に彼を慰めるのでした。
【Trivia & Topics】
*まるでドキュメンタリーのよう。
毎週一回開催されるミーティングでの活発な議論はドキュメンタリーを観ているような臨場感があります。3台のカメラで撮影されています。
*ロバン・カンピヨ。
脚本・監督のロバン・カンピヨ自身ACTUPのメンバーだったのでメンバーたちの言動や行動が実にリアルに再現されています。
*若者の勇気。
HIV/エイズ患者への偏見や差別が横行し、多くの人が無関心だった時代に自らの命をかけて政府や製薬会社に抗議を続け、世の中の人々に必死にアピールした若者たちの勇気を描いた作品です。
*受賞歴
◯カブール映画祭
・観客賞
◯カンヌ国際映画祭
・グランプリ
・国際映画批評家連盟賞
・フランソワ・シャレ賞
・クィア・パルム賞
◯ヨーロッパ映画賞
・編集賞
◯ニューヨーク映画批評家協会賞
・外国映画賞
◯サン・セバスティアン国際映画祭
・セバスティアン賞
【5 star rating】
☆☆☆