Ninico

BPM ビート・パー・ミニットのNinicoのレビュー・感想・評価

3.6
エイズ感染者の団体の物語。
私はクラブミュージックが好きで、クラブと密接な関係にあったゲイカルチャーにはある程度理解があるつもりで挑んだが、ゲイカップルの恋愛と反差別運動のディスカッションを軸に進められるこの映画には、若干入っていくのに苦労した。

活動家の男の子二人が恋に落ちる瞬間の、飛沫のような心の動きを捉えたシーンは実に鮮明で情動的で、あんな恋の始まりなら一生モノだろうと思わせる魅力のある描写であった。
しかし、それに続くラブシーンはややキツいくらい生々しく、写実的な男の喘ぎ声は夢に出てきそうだ。
二人の恋は深く美しいのだが、凄く凄く「具体的」に性シーンを描いているから綺麗事として始まらない。

音楽と映像について。
象徴的に場面変えで使われているクラブで人々が踊るシーンには、テクノ/ハウスの力強さ、前向きさを出し切ったような素晴らしい映像美がある。選曲も良い。
とかくドラッグや労働者階級の若者のやりきれなさの描写に消費されがちなこの手の音楽であるが、この作品においては、意志を持って真剣に活動している人々のエネルギーや瑞々しさを代弁させることに使われ成功している点が良かった。

話の内容として重みのある映画ではあるが、
今や当たり前の知識とも言えるコンドームの使用、注射針の使い捨て、等々はこういった人達の啓蒙で広まったという歴史もある。大人として見ておいて損はないお話かと。
Ninico

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