YUKi

BPM ビート・パー・ミニットのYUKiのレビュー・感想・評価

3.5
死を目前にしたHIV感染者だからこその
生き急ぐ生命力が、
刹那でまばゆくて痛い。

直視できないほど輝きに満ち、
美しい。

もちろんハッピーエンドなんて
想像もしていなかったけど、
終盤の抗議行動では
自分自身を生き切った
主人公ショーンと、その彼ナタンとの
カタルシスを描いていて、
そこに救われました。

ACT UPというエイズを主軸にした
活動団体のことは知らなかった。

その団体が行なっていたこと、
ある製薬会社が開発している
対エイズの新薬の発売制限、
それすらも知らなかった。

人の生死をまっぷたつに分ける
こんな問題を知らないなんて、
自分は勉強不足で世間知らずだなあとも
思う。

こういった社会問題と
それに付きまとう社会的な偏見。
そして団体内の人間関係の危うさ、
死を直前にした者への愛。

この作品は自分が理解できていなかったことを熱を以って愛情を以って
訴えかけてくれます。

たぶん女脳では理解し難い
ショーンを失った直後のナタンの行為、
あれも紛れもなく愛ですね。

これほど自分の感想をまとめるのが
難しい作品もなかった。
消化はできない。

ただひとつ、HIV感染、エイズを
題材にした作品なのに
差別に苦しむことにピントを合わせず、
事実に基づいた問題を定義した。

そこがこれまで観てきたものとは
別格のものであるということだけは
断言できる。
YUKi

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