みゅうちょび

ラッキーのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

ラッキー(2017年製作の映画)
3.7
ハリー・ディーン・スタントン最後の作品。

多くの映画で脇役として活躍してきた彼の最後を飾るにふさわしい、と言うよりも、これは彼そのもののために作られたような作品。

監督は、自身も脇役として活躍するジョン・キャロル・リンチ。「ファーゴ」のノーム役が印象に残ってるかな。初監督作。

90歳のラッキーは、朝起きるとタバコを吸い、身体を拭いて、顔を洗って、自己流のヨガをやって、牛乳を一杯飲み干す。馴染みの店でコーヒーを飲みながらクロスワードパズル。夜も同じ店でブラディマリーを飲みながら他の常連客と時間を過ごす。
そんな日々を送るある日、めまいで突然倒れてしまう。そして、自分の人生にも終わりがあることについて考え始める。

一度も結婚せず、独り身であると言うことも含め、やはりこれはスタントンそのものなんだろうなと思った。

呼ばれたパーティーで歌を披露する彼。自身もマリアッチの音楽家でもあったというスタントン。優しい歌声が印象深い。そして、その主役の彼の脇を固めるのは、なんとデヴィッド・リンチであったりトム・スケリットであったりする。

脇役だった彼が最後は主役で、彼の映画人生の中でも縁の深い人々に囲まれて、なんて幸せな俳優人生だったろうと思った。

人生誰もが主役だし。

年老いて独り気ままに生きてきたラッキーがふと死を意識する時、それまで向かい合うことをしなかった孤独感を無視できなくなる。「一人暮らし」だった彼が「孤独」と感じ、近づいている終わりに恐れを抱く。老人はきっとそんな時が来るんだろうなと、他人事ではないなと感じた。

誰にも訪れるその時までどう過ごすか… 何か特別なことができるわけでは無いけれど、自分は自分らしく生きていく。
最後の笑顔は、そう言っていたに違いない。

🐢… … …
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