みきぴん

ラッキーのみきぴんのレビュー・感想・評価

ラッキー(2017年製作の映画)
3.7
はるか昔に『パリ、テキサス』を観たきり
ハリー・ディーン・スタントンの
事は忘れていた

昨年 91歳で亡くなっていた
そして
こんな愛すべき遺作を残していた

まさに人生の記念碑であるかのような
すべてを終える為の人生の集大成であるかのような作品

90歳で一人暮らしをするラッキー
馴染みの店や友達に囲まれた
毎日の規則正しいルーティーンが永遠に続くと思っていたけれど
ふとした事で
『死』を意識するようになる

神を信じていないラッキーにとって『死』は
消失であり 無であり 空っぽであり
続いてきた日々が断ち切られる事であり

それは
友人ハワードが長年のペットのリクガメを失った悲しみとも重なる
絶望的な喪失感だ

しかし
まるで禅問答のような
会話がやり取りされる中
ハワードの 言葉が 耳に残る

『リクガメのルーズベルトが
脱走計画に費やした時間と
捜せないようにした手間を考えた。
すると、彼は去ったのではなく
大切な用事で出かけたのだと気付いた。
これまで私が邪魔していたと。
だから捜すのはやめた。
縁が有ればまた会える。
私はいつでも門を開けておくだけ。』

自分の人生の終わりを受け入れるという事
静かに 納得するという事
『無』を理解し
静かに微笑むという事

90歳まで生きてみなくては…
私にはまだまだ
あの微笑みは マネ出来ない

thank you ラッキー
thank you ハリー

*12/7 DVD鑑賞
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