普遍なテーマを事実と言葉と経験で、あらたなストーリーに仕上げた作品。
哲学的であり、けれど私たち観客を見捨てない。
ラッキー(ハリー・ディーン・スタントンさん)という頑固なおじいちゃんが死と向き合うストーリー。
私は死という物をいつも考えて生きる人間なので今作は違う目線で見てしまった。
それは(当たり前なんだけど)人は、自分の経験から基づく価値観と言葉で、その普遍的なテーマの見方が変わるということ。
ラッキーは主に言葉を大切にしていた。
屁理屈とも取れるけれど、その『言葉』で死という物を消化していく。
戦争という『経験』をした人物も、その経験で死を見ている。
大切なペットが逃げたという悲しみと、自分の『価値観』を大切にした人物もいる。
生と死。
本当に普遍的なテーマだけれど、今作には一切綺麗事がない。
この物語に出てきた人間が、きちんと人生を歩んできたという事実がある。
フィクションなんだけど、リアリティが凄くあってラッキーがどこかで生きているんだという気持ちにさせてくれる。
そしてそのリアリティが、普遍なテーマをより濃厚にしている。
他人事ではないと深く感じさせてくれた。
ラスト。
ラッキーと目線が合う。
まるで、頑張れよ、と勇気を与えてくれるような優しい目付き。
この作品に出会えてよかったと心底思った。
ハリー・ディーン・スタントンさん
お名前は存じているんだけれど、昔の作品はあまり観ていなくて……。
今作が最期だったというのが、また色々考えてしまう。
彼の「怖いんだ」と言った瞬間の表情を忘れることはないと思う。
ギャン泣きした。
重い作品であるのに間違いはないんだけど、観終わった瞬間のスッキリ感が素晴らしい。
リンチ監督、良い味出してる。
ストーリー : ★★★★★
映像 : ★★★★★
設定 : ★★★★☆
キャスト: ★★★★☆
メッセージ性 : ★★★★☆
感情移入・共感 : ★★★★☆
cc/“孤独”と“一人”は、同じじゃない。