コリドラス

ラッキーのコリドラスのレビュー・感想・評価

ラッキー(2017年製作の映画)
4.7
老人が主役の映画は数あれども、ここまでリアルなものは初めて。それだけに老いとか死生観というものを深く考えさせられる映画でした。

リアルなのは、主演の90歳で亡くなったハリー・ディーン・スタントンが亡くなった年に公開された自伝的な作品でもあるからなのでしょう。彼は作中のラッキーと同様に海軍の調理兵で沖縄戦にも従軍したそうです。

彼の死生観にはやはり戦争というものは大きかったのかなと思いました。

主人公ラッキーが発する言葉は、哲学的なメッセージが随所にありました。「すべてはなくなるってこと。君もお前もあんたも俺も、タバコも何もかも、まっくらな「空(くう)」へ。管理者などいない。そこにあるのは無だけ。空だよ。無あるのみ」

健康そのものだった彼が倒れて初めて死を悟り恐れ慄き、ヤケになってしまったり、恐怖を孫ほどのウェイターに告白したり、苦悩しながらも街の人たちとの交流の中でやがて来る「死」への折り合いをつけるという過程の描き方がとてもリアリティがあって素晴らしかったです✨

自分も現在、老父を介護中であり、そしてリクガメを実際に飼っていたりと共通項があって余計に身にしみる作品でした!

「Alone(孤独)の語源は、All (全て)とOne(1人)から来てるんだ」
コリドラス

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