YUKi

ナチュラルウーマンのYUKiのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
3.5
あらすじを読む前、ポスターを見る限りは
主人公・マリーナは女性だと思っていた。

実際にトランスジェンダーである女優、
ダニエラ・ヴェガが堂々とトランスジェンダーを
演じきっており、その姿は女よりしなやかで優しく
男より逞しい。

冒頭で、家族ある年上の恋人を
あっけなく失ってしまうんですが、
それを引き金にあらぬ疑いをかけられ、
彼の親族をはじめとする周囲から
想像しがたい仕打ちを受ける。

彼女がトランスジェンダーだから、
不倫関係だったからとはいえ、人間としての
存在価値すら剥奪されてしまう。

遺族が“モンスター”と称し
嫌がらせを受けても決して引き下がらなかったマリーナ。

“もの語らず”設定の作品なので
観客は、彼女の気持ちを行間から読み取るしかないのですが
向かい風に立ち向かうシーンや
堂々と葬儀に参列しようとするシーン、
死体と対面するシーン、 “愛犬返せ”シーン、
そしてラストの歌唱シーンに至っては
彼への情愛の深さやカタルシスを丁寧に演出してある。

人生にひとつの落とし前をつけ、自分自身を取り戻し
前だけを向いて歌う姿は見とれるほど美しかった。

序盤の、10日後に行くはずだった滝のビジュアルは
溢れんばかりに流れ出す彼女の人生の起点を
表していたのか‥。

ひとつ、予想できずじまいだったロッカーの中身!
何度も頭ひねって理解しようと試みたけど
かたちとして見せない2人だけの秘密を遺されたようで、
そこがまた印象深くもあります。
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