T子

素敵なダイナマイトスキャンダルのT子のネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

『芸術は爆発だ』と言った人がいたが、僕の場合は母が爆発した。
※ニュアンス

というフレーズが何度も出てきて、このフレーズがなんともかっこいい。実際主人公の母親は、不倫相手とダイナマイトで心中しているからふざけて言ってるように捉えられて欲しくはないのだけど。

私はこのモデルの方を知らなくて申し訳ないけど、史実に基づいた(どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのかはわからないが)半生のドラマで、これが本当ならばなんてパンクなんだろうと思った。

ザッとした流れは、母が自殺して、(途中を経るが)父親の後を追って上京して、デザインに目覚め、爆売れエロ雑誌編集者になり、猥褻と警察に何度もお世話になったりして雑誌は廃刊、パチンコ雑誌を創刊するというストーリー。

私は残念ながらその年代ではないので「懐かしい〜〜〜」と言えないのが悔しいほどだが、その背景はよく知っている。
主人公がアートを志すきっかけになったのは横尾忠則で、その当時のアートはアバンギャルドであり原色で日常の中のトリップみたいな感があったと思う。幼い頃にあのイラストやアート作品はちょっとトラウマになるようなものだった。今見るとすごいレイアウトも配色も格好いいんだけれどもね。

話は横道にそれるけど、看板屋でレイアウトをする場面で烏口に雲型定規が出てきたときは悲鳴が出たwwwそして雑誌をレイアウトする場面では写植を版下にピンセットを使って貼り込んでいたし、色指定がトレペのあたり懐かしさで胸の奥がツンとした。時代は違うがそのデザインワークは体験しているのでなんとも言えない気持ちになった。

看板屋でもやもやしている中で、峯田演じる心の友とアートについて語り合い、どんどんアートの道にハマっていく。個人的に受けたピンサロのポスターデザインから、仕事としてどんどん自分の表現が街の中に溢れる。でもそれは本当に自分がやりたいアートなのだろうかと模索するために、絵の具をかぶり転げまわり前衛芸術を繰り広げていく。まさに70年代って感じだなw

セックス産業はうなぎのぼり、ビニ本やテレホンセックスが街の中に溢れ出したのもまさにこの時代で、当時の男性の胸と股間を相当熱くしたと思う。だけれども撮影のシーンで出てくるエロをもっとエロく見せよう!となる舞台裏は滑稽で、作り手と受け手の思惑が上手く対比してるなーと思った。ただやっぱり昔のエロはリアルというか生々し過ぎて、途中で差し込まれる画像は温度と湿度を感じた。なんて言うのか、決して清潔じゃない布団の湿気というようなw

注目を浴びれば目を着けられることも当然で、警察にしょっぴかれる。
松重さん(本当よく見るなー)演じる警察にのらりくらりとごまかしながらもいちいち説明する掛け合いのシーンは笑ってしまった。なんなら松重さん訛ってるし。結局雑誌は廃刊へ。なのに次の雑誌にシフトする商才はすごいと思った。エロもパチンコも共通点がある、それは『欲』。そりゃ雑誌売れるわ!目の付け所すごい!

アートが軸にあるからなのか(果たしてそれはどうかはわからないけど)、オープニングも差し込まれる雑誌のレイアウトも、エンディングのスタッフロールもデザインが美しくて、そこに引き込まれてしまった。あ、もちろん話も面白いです。柄本佑のひょうひょうとした演技と語りがあのジメッとした映画をジメっとさせない。

特筆すべきは前田敦子。
ああいうおばさんいるわwwwって思った。上手すぎるwww
ちょっと野村監督の嫁のサッチー思い出したw
あとムラジュンがどうしようもない親父で、演じたのがムラジュンだったから親父を「ロクでもない親父や!」ってプンスカしないで見ることができた。
T子

T子