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散り椿のUTのネタバレレビュー・内容・結末

散り椿(2018年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

「人は大切に思うものに出会えれば、それだけで幸せだと思っております」



椿の花言葉は「気取らない優美さ」「控えめな素晴らしさ」「謙虚な美徳」「控えめな愛」等々あるようですが、どの言葉もこの作品にピッタリで、日本人の根底にあるような想いが込められた作品だなと感じました。
四季折々の風景や日本の建築美はもちろんのこと、主演の岡田さんの鬼気迫る演技、特に美しくも目で完全に追うことのできないキレのある殺陣は息を呑むほどです。
そもそも予告編でチラと見えたその殺陣目当てで観に行った、というのもありましたが、想像以上にクオリティが高く、ジャニーズファンじゃなかろうが、男だろうが惚れ惚れしてしまいました。


時代劇に共通する勧善懲悪をベースとしたシンプルな本作の脚本は、話が弱く感じる人もいると思いますが、その分メッセージ性や演出をこだわりやすい利点があるのでそこまでマイナスには感じませんでした。
四天王とか必殺剣といった妙に男心をくすぐる設定、悲恋や後に託す者の成長、悪役が気持ちいいくらいのクズであり爽快に斬り殺されるなど、今時珍しいほどストレートな、良くも悪くも裏切りのない展開でありました。
黒澤明監督のもとで撮影助手、助監督をされた方が携わってる本作はそのイズムが刻み込まれていたように思います。


時代劇は人を斬るシーンが最大の見せ場であることから、往々にして展開が暗くなりがち、という御多分に洩れず本作も終始暗いので少し肩がこることやフレームに映る情景が美しすぎて、箱庭感・作り物感が逆に際立つという点があったかなぁと思いました。



木更津キャッツアイのぶっさんはもういないのかなぁと瓜生新兵衛の背中を見て少し寂しく感じた2018年鑑賞第26作目。
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