安藤エヌ

さよなら、僕のマンハッタンの安藤エヌのレビュー・感想・評価

3.4
青年期の揺れ動き、自己の模索と「愛とは何か」という問いかけが上手く合わさり、「The Only Living Boy in New york」という英題に多くの意味をもたらしていると思った。

一人だけで生きていると思いきや、人生とは自分以外の様々な人との関わりで出来上がっている。主人公トーマスも決して一人ではなかった。彼の人生は青年期という多感な時期の最中で次第に複雑さを増していく。それを見守る一人の男と、彼の家族に隠された本当の真実。パーティーのシーンや友人の結婚式で、NYで多くの人が行き交う交差点のように、主人公のトーマスが登場人物と交差する場面が印象的だった。
人というものの複雑さと、それゆえの愛の多様性。NYの片端でメガネを掛けてどこか冴えない人生を送っていたトーマスの人生が「小説のように」劇的になっていく過程。
人生とは時にドラマチックで時に陳腐な、愛おしいものであり、だからこそ物語として一本の映画になるのだという気がした。

ラストシーン、「彼」の著書出版記念イベントの最前列に「彼女」が座りその話に耳を傾けていた、それは一つのれっきとした愛の形なのだ。
安藤エヌ

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