マクガフィン

パティ・ケイク$のマクガフィンのレビュー・感想・評価

パティ・ケイク$(2017年製作の映画)
3.4
貧困層からの脱出の手段として、ヒップポップでのし上がることは既視感溢れるが、車椅子生活の祖母の面倒をよく見るし、酒浸りの母親も必要以上に軽蔑しなく、ヒップポップスターの札付きのワルとは真逆な設定が良い。また、白人で肥満体な女子と薬剤師のインド系男性と自閉症的黒人青年のミスマッチ感が逆に新鮮で、車椅子のタフで豪快な祖母のキャラも面白い。

デモ音源費用を稼ぐために熱心に働いたり、職を必死に探したりたりする合間に家族の世話をしないといけないことで、ヒップポップへの道のりは足かせだらけに。また、生活と夢の実現のために動くことが伝わり、社会的弱者の視点や問題も含まれていることでキャラや物語の構築は抜け目がなく、丁寧に描かれていて説得力が伝わる。

パティと祖母の兼ね合いは抜群に良く、メンバー2人との相性も悪くないのだが、それより時間を割く元歌姫の母親エピソードがベタ過ぎる展開で面白くないのが残念。上映時間の109分より長く感じたのはそのためだろう。

メインは終盤の新人登竜門的ステージのラップ。ステージの暗闇から派手な彩色で発せられるライトを背景とし、パティのブロンドヘアーとゴージャスな衣装で凛々しい立ち振る舞う模様は、抜群にカッコ良い。積もり積もった怒りや絶望を脂肪として体内に蓄積ことを一気に吐き出すようなラップは爽快感に包まれる。
パティと黒人青年の外見の変わりようで、見た目で人を判断してはいけないサブテーマ的なことも、さり気なく盛り込まれている。

少し高い丘のような所から俯瞰のように見下ろす普段の街並みに何とも言えない味わいを感じた。