長年手がけた紳士服販売業をやめ飲食店経営を始めたフィンランド紳士と、シリア難民・カーリドの話。といっても2人が出会うのは1時間以上が過ぎたあとのことで、そこまではそれぞれのエピソードが独自に進んでいく。
特に印象に残ったのが、難民に対する各国の“冷たさ”。自国が戦闘状態で、命からがら逃げてきた難民に対して、受け入れ側の国の対応は厳しい。難民申請してもなかなか通らず、何年も施設に閉じ込められたままだったり、そもそも申請が拒否されたり。何も悪いことをしていないのに極右に目の敵にされて襲われたり。
もしも日本に住めなくなって外国に逃げるようなことになったら、私たちも同じ運命を辿るのかもしれない…と考えると、あまりに冷たい社会だと感じざるを得なかった。生きるにも許可がいる時代。
物語は、そんな難民カーリドと紳士の出会いによって少し前向きに進んでいく。
重いテーマを扱っているものの、終始淡々としていて、派手な音楽、感動的・衝撃的な展開はほぼなし。感情描写もなく、ただ物事が進んでいく様子を、登場人物と共に見守る。
分かりやすいオチもないし、先が気になる展開もない。見るシーンや人を選ぶ作品だが、静かな雨の日の午後、コーヒーを飲みながらひとりで見たら最高に心地いい映画かもしれない。