湯呑

希望のかなたの湯呑のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.8
とにかく、役者陣の表情が良い。はみ出し者の集まるレストラン、生き別れになった妹を探すシリアからの難民、薄汚い迷い犬。凡百の監督ならお涙頂戴のウェットな演出に傾きそうな要素を盛り込みながら、カウリスマキは役者たちに始終仏頂面をさせながら、淡々とした語り口で映画を進めていく。カジノの一発勝負で大勝ちし、レストラン経営の元手を稼いだオーナーは、シリア難民である従業員の妹をフィンランドに呼び寄せる為、裏の手口を駆使するのだが、このオーナーの前職は洋服の卸業者である。なぜ、お前にそんな事ができるんだ、という問いに映画はいっさい説明をしていないのだが、それでも、サカリ・クオスマネンの顔を見れば何となく納得できてしまう。現代のおとぎ話と言えば簡単だが、それを観客に信じ込ませようとするあまり、説明過多の下品な映画になってしまう作品が多い中、カウリスマキのこの強気の姿勢は群を抜いている。
湯呑

湯呑