ダンク

希望のかなたのダンクのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.1
アキカウリスマキ監督の映画はレンングラード・カウボーイズ以来二作目!この映画でも音楽がアクセントとしていろんなところに登場していました!
どの描写も非常に単調であり感情の煽動を促すことが無いのですが、一つ一つのシーンに現実の社会問題の要素が組み込まれていて考えさせられます。音楽やカット割で煽らないという点キューブリック映画に共通していて、美しい一つの画角を固定してみせるといったこだわりが随所に現れている、そういった点好きでした。飾ってあるジミヘンの絵がいちいち印象的です。
素晴らしかったのが、この映画で難民に対しての我々の印象を誘導した面接のシーンの一連のカメラワークです。クローズアップとも言わない微妙に寄り過ぎの主人公のワンショットは人物を無機質に見せ、彼が本当のことを言っているのかどうかわからなくさせます。まるで操り人形みたいです。しかし、そこから通訳が介入して引き絵になったところで一般的な画角に切り替わり、彼の人間味が溢れ出してきます。彼は自分の悲惨な状況と探している妹のことを語り出します。この一連のカメラワークでグッと主人公に感情移入でき、移民は不思議な異国民では無く、自分たちと全く変わらない人間だというメッセージが伝わってきました。他のシーンではあまりそう言った表現をしないせいか、ここが一番印象に残ります。そして非常に説得力のあるカット割です。
実際に私達はそのイメージから中東の人達に文化の違いや国際社会でのその国々の境遇などで自分たちとは少し違った人種の人達という偏見を持ち合わせているのではないでしょうか?そうではなく、彼らも私達とはなんら違いのない。そんな当たり前なことを改めて気づかせてくれます。
次のシーンでは広場の像とバス停の画角に変わり、その像の場所に主人公が歩いてきてカメラの画角からその銅像を隠す、するとフィンランド解放軍と名乗る白人達が歩いてきて、彼に暴力を振るうといったことが起きます。
国際社会から受け入れられない状況と、彼らを偏見し差別する一定数の人間達を淡々と描いているこの映画ですが、やはりどの絵も美しく、さっぱりとしている。
派手ではありませんが、良い映画でした。
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