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パーフェクトワールド 君といる奇跡のnaoズfirmのレビュー・感想・評価

3.2

特別🎬

ストーリーは事故で車イス生活を送る青年と初恋の相手である彼と運命的に再会したヒロインが試練を乗り越える姿を描いた作品でした。今作はハンディキャップを持つ人が特別なことをして認められる姿ではなく、当たり前のことをして当たり前の幸せを手に入れる物語として描いていました。樹が何か特別なことをして認められるでもなく、特別なことをしたからつぐみに愛されるわけでもありません。ただ当たり前の「幸せ」を手に入れる、それだけの物語なんです。"ハンディキャップ"を扱うということはフィクションにとって非常にデリケートなので、難しいところがあると思います。今作は良い意味で肩の力を抜いている印象です。

普通に観れば今作はハッピーエンドだと思います。しかし私は疑念が残る点があります。それはオペ後母親が呼ばれたシーンです。このシーンで息子が助からなかったことを告げられたのではないか?という懸念が拭いきれませんでした。他にも樹が快復する様子を見せるシーンがない点、病院でつぐみが手紙を読むシーンから唐突にあの校庭でのシーン、そしてラストシーンのロケーションが桜舞い散る校庭なんですが、この場所というのはつぐみが絵を描いたあの絵の中の光景に似ている点、そう考えるとあのラストシーンもまたつぐみの「叶わなかった願い」なのではないかと想像できるんですよ。恐らくラストにおいて樹は手術の失敗により命を落としていて、つぐみはそのショックから逃れるために「美しい夢」を見ているのではないかと思いました。つぐみは、樹が死んでしまったがために叶えることができなかった「体育館前の桜を見る」という願いを自分の夢の中で叶えてしまったのではないか。あのシーンでつぐみのセリフの中に「夢の中の鮎川先輩は車椅子に乗っていました」というセリフがありました。ラストシーンでの彼ももちろん車椅子で登場です。そう解釈していくと「パーフェクトワールド」というタイトルの意味は、君が失われてしまった不完全な世界。そんな中で、つぐみは彼のいる夢の中の「完全世界」を作り出してしまったとも読み取れました。
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