ERI

少女邂逅のERIのレビュー・感想・評価

少女邂逅(2017年製作の映画)
3.7
痛くてうずくまる。エンドロールでしばらく動けなくなってしまった。作品自体はとても荒削りだけど、あぁこの監督はきっと人生をかけてこの作品を作ったんだろうなって思って動けなくなる。

悲しみが詰まっててこの映画を撮ることはまるで希望。そんな風にどろっと詰まった中身をフィルムの中に閉じ込めたみたいな「少女邂逅」。

監督、脚本、編集、枝優花さん。主演の保紫萌香さんとモトーラ世理奈さんも、他のクラスメイトたちもリアルで毒があって空っぽで良かった。何者でもなくて黙ってる声がまるで悲鳴みたいに聞こえてくるよ。

痛みに鈍くなった観客を鈍器みたいなやつで鈍く殴られるみたいな、かと思えばカッターみたいな鋭利でさっと切られるみたいなそれ。

いじめにあっていたミユリは助けても言えなくて、痛いとも叫べなくて、ただ黙って自らをカッターで切ろうとするけどそれすらできなかった。ふと体によじ登る蚕。友達みたいで、ツムギと名付けた。大切に可愛がっていたのに、いじめっ子はツムギを投げ捨ててまたミユリを狭い部屋にひとり閉じ込めようとする。その次の日、ツムギと同じ名前の富田紬が東京から転校してきた。

女の子と女の子。誰もそこには入れない近づきすぎて境界線がわからなくなって、壊れてしまいそうなつながり。土砂降りの中でも笑いあえたのに、関係は日々変わってゆく。とにかく主演の2人がめちゃくちゃ魅力的で目が離せない。

10代の感性が丸ごと全部出てたあの頃に、ひりひりと感じていた感情に、思いっきり引き戻されて息が苦しい。イノセントな空気と張り詰めたココロと、ぽてっと膨らむカラダと。忘れてないよな、あの頃に見てた世界は。

一方で大人になったわたしは、少女たちを見ながらずっとずっと考える。もしもこの狭い教室を疎ましく苦しく感じる君が目の前にいたら、今のわたしはなんて声をかけるんだろう。妙に遠くに聞こえる担任の声は、乾いていてなんであんなに嘘っぽいのか。大人が全部あんな風だと思わないで欲しいけど、適当な言葉が見当たらない。外の世界は広いのを知っているけど掴めない空を見ながら今の場所に閉じ込められてしまった君に、どんな言葉をかけるんだろう。悲しみを黙って持つ、そんなことしかできないのか。


その答えが出ないまま、だったな。
ERI

ERI