おどろきの白鳥

囚われた国家のおどろきの白鳥のレビュー・感想・評価

囚われた国家(2019年製作の映画)
4.9
素晴らしかった。
これは決して、潤沢な予算で作った派手なドンパチSFXの戦争映画ではない。
なので、それを期待していた方には肩透かしかもしれない。

これは人間が、自由と尊厳をかけて、監視システムと戦う話だ。

宇宙からの侵略者に負けて服従した人類は、全市民の身体にGPSが埋め込まれ、死ぬまで監視されるようになった。
「統治者」と呼ばれるようになった異星人たちに対して、自由を取り戻そうと願うレジスタンスたちが、いかにして監視の目をかいくぐり、テロ(というかゲリラ)攻撃を仕掛けていくかがこの映画の肝。
実にスリリング。
心理戦の緊張感と、複雑な計画の達成感に同期できるか。

そしてもう一つ別の見方もある。
冒頭で殺された刑事夫妻の二人の子供たちを成長を見守る=人類の未来を守ろうとする、大人たちのやさしさの話でもある。

絶望しない、諦めないという決意。
敵は宇宙人という形をとってはいるが、これは相手が特定宗教や暴走した軍事国家など、同じ「人類」と考えてもありうる話だし、この物語を理解しやすいとも思いました。

説明セリフがほとんどないため、行動やセリフにどういう意味があるのか実に理解しにくいという側面があり、それゆえ「よくわからない」「地味」という評価になりがち。
しかし、画面には膨大な情報量が存在し、読み取っていくことで面白さが加速しました。
二度目、三度目の鑑賞の方が、より面白さが増していくタイプだと思いました。