このレビューはネタバレを含みます
まず、原作を知らなくても楽しめる映画だと思う。それだけ主演二人の演技力は高かった。この二人であったから、その演技力の高さがあったから、顔の入れ替わりのあるこの映画でも混乱なく観れた。脚本も原作から実写化する部分が上手く抜粋や変更がされていたと思う。そして菅野氏の音楽ともよくマッチしていた。スイスの映画祭でも大歓声を浴びた理由がよくわかる。佐藤監督すごい。
具体的な感想として。
最初の入れ替わりのシーンで芳根京子の演技にゾッとした。本当に顔だけが入れ替わったような演技。しかも鏡越しで。素晴らしい。ここから映画にのめり込める。もちろん、土屋太鳳の演技もとても良かった。まだ顔の入れ替えに慣れてなく、劇の練習中に相手役に台詞として言われる"美しい"という言葉にさえ、ニナの顔(中は累)でありながら、言われ慣れてない様子の演技は印象に残った。劇中劇でのダンスも土屋太鳳にしか演出出来ないであろう妖艶さを纏い、舞っていた。さらに土屋太鳳は劇中劇での役を含めると、一人で三、四役演じ分けていた。凄い。ちなみに芳根京子の演技は全て印象に残っている。(芳根ちゃんのファンです。)ニュアンスの捉え方次第だと思うが、淵累は"ブス"というより"醜い"女性である、と思っている。その累の醜い部分を、また、醜い存在として扱われていたにも関わらず、時にニナに優しく接する姿を上手に演じていた。特に、醜さの塊である累が、好きになってしまった男性をニナに奪われた悔しさ、嫉妬から、一人の女性として叫んで泣くシーン。一人二役の時点でそうだが、これもまた簡単にできる演技ではないと思う。鳥肌が立った。(素がとても可愛いという事実を知っていても)醜い女性として捉えさせる、ニナが中身で顔が累の時はまるで人が違って、イヤな女だなと(芳根京子のファンであっても本当に思った)思わせる演技力、本当に凄い。"ボス・ベイビー"という映画で声優も経験しているので(土屋太鳳も声優を経験していたはず)心の声もうまい。"わさび"という映画の時もそうだったが、完成披露試写会で涙ぐむ彼女の姿は、真剣に、それこそ自分でも言っていたように命を懸けて、役に臨んだということを表している。
映画を観ずに、醜い顔の役を芳根京子が演じることに違和感を感じる人は多い。言ってしまえば当たり前だと思う。なので、その人たちには女優としての芳根京子の魅力をこの作品を観て是非、堪能してもらいたい。原作者もこの部分の宣伝が難しいと言っていた。まさに観なければ分からない映画だと思う。
他には、浅野忠信の普段はダラッとしつつも何かを企んでいるようなマネージャーから一変し、淵透世に魅了されている男としての心情を露わにし、その娘である累に透世の姿を重ねようとする羽生田の表情、態度の変化。檀れいの霊的存在でありながら、存在感の強い姿も違和感を感じさせない妖美な演技も良かった。烏合さんとニナのキスシーンもエグすぎて良かった。明確に顔入れ替えのキスとは違うのが良い。芳根京子が相手役ではないので安心して観れた。
残念な点を挙げるとしたら。
・子供時代のシーン、美人女優である母親と比較されることでも劣等感が強まっていく描写が少なかったように思えた。口の傷が主として累の劣等感を強めていった描写だと感じた。これだと口の傷には関与していない母親が霊となって頻繁に現れているという違和感。口の傷以外、傷の前にも劣等感は抱いていた。その根となる部分の描写が弱かった。(でもそれすら成長した累、つまりは、土屋太鳳、特に芳根京子の演技力がカバーしているように思えた。)
・子供時代の累が最初に顔を入れ替えたシーンは、演技を含め替わったのが分かりにくかった。
・ニナが最初に倒れた時、ニナと累は烏合さんの件でもめていた中で、累はとても心配そうにニナの様子を羽生田さんに連絡したが、叫んで泣いて夜も眠れず…の後のことだったので、結局心配するにしても、その前に少し葛藤があるか、実は心配したフリでこの先ずっとニナの身体を乗っ取れるのでは？と悟った累の表情の変化の描写があって良かったと思う。
・烏合さんの演技…下手では？周りが上手すぎるのもあるが、完全に配役ミス。でも、割とちょい役だったので、まぁ。そして烏合さんが出てなければ試写会がジャニオタで埋まることはなかっただろう。(劣等感、漏れてる？)別として上映前のトークは面白かった。
最後に。
ホラー要素が強めなのかなと思う。隣のJKが怯えていた。映画だからこそ味わえるゾッとする感じが堪らなく良かった。劇中劇(劇の練習のシーン含め)のカメラワーク、終わり方もまた良かった。Aimerの曲も購入が決まった。(特典のDVDが目当て…)ちなみにエキストラで参加したが視認できる程には写っていなかった。関係者の人がこの辺の人映りま〜すって言っていたその辺の人だったのに…。是非、DVDを購入して見つけたい。
