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累 かさねのjyoのレビュー・感想・評価

累 かさね(2018年製作の映画)
2.3
『累』は映画化がわかる前から原作を読んでおり、去年の夏頃に映画化が発表され、どうなる作品になるのだろうと期待した。

ニナの役は土屋太鳳、累の役は芳根京子。累の役は適役であると思ったが、ニナには若干の不安があった。私のイメージでは、個人的には欅坂46の渡辺梨加であった。渡辺梨加は欅坂46のメンバーの中でも屈指の美貌の持ち主で、演技力に関してもファンの間でも高い評価を受けている。なので、ニナを演じるとしたら彼女であろうと思っていた。それに物語の構造上、ニナ(本来は累)の方が出番が必然的に多くなるわけで、彼女の演技を最大限に味わえそうであったからだ。

土屋太鳳は『orenge』や『青空エール』、芳根京子には『表参道高校合唱部!』、『先輩と彼女』のイメージがあり、どれもクラスからはやや浮いたような役柄を演じおり、また顔の系統も2人はそっくりだ。容姿が全く異なっている原作と同じような雰囲気を保たれるか不安ではあった。土屋太鳳はどちらかといえば累 のイメージである。

しかし、映画の本編を観てみるとそんな不安はそんなに心配する必要はなかった。基本的には演技合戦とも言える展開が繰り広げられている。それに、劇中で土屋太鳳が華麗なダンスを披露する場面がある。土屋太鳳はダンスを得意としており、現在放送中のドラマ『チアダン』でもチアダンスを披露している。

美しい顔を持つことに圧倒的な自信を持っていているが、大根であるニナは醜いが天性の演技力を持つ累を利用しようとする。累は顔を入れ替える事ができる口紅を持っているからだ。やがて、累は注目をされることに快感を覚え、立場が逆転していく・・・。

この映画を観ると誰もがナタリー・ポートマンの『ブラック・スワン』を連想する人は多いだろう。『ブラック・スワン』の主人公の名前だってニナだ。そのような関連性からも『ブラック・スワン』のパクリだとも思ったりするだろう。しかし、『ブラック・スワン』の場合は、主人公の妄想やトラウマが主であったが、『累』の場合は、「口紅」というキーとなる道具が出てくるので、ホラーファンタジーという要素が加わっている。現実ではあり得ないこの道具が人間が名声を得たいという気持ちを『ブラック・スワン』とは違うアプローチで描いている。若干、苦悩や苦しさに関してはG指定という事もあってかやや弱く感じた。「私だったら、あーやって撮りたい。こうして撮りたい」と思いたくなるような部分がいくつもあった。例えば、この映画はアスペクト比が2.35:1であるが、私なら2.76:1のいわゆるウルトラパナビジョン70で撮る。『サロメ』の場面はあの比率の方が合っているようにも思ったからだ。今まで色々な映画を観てきたが、この映画ほど私にそう思わせた映画はないかも。まるで、累とニナのようだ。その嫉妬心ともとれる心理から思わずスコアを低評価にしたくなる。というかした。

最後になるが、土屋太鳳でも最高であったが、私の欲望ではやはり渡辺梨加で観たかった。それに、来週の金曜日には同じ欅坂46の平手友梨奈が主演する『響』が公開される。もし、渡辺梨加のニナが実現していたら、欅坂46の力を同時に見せていたことになっていたかもしれない。

今年観た映画の中で色々な意味で私に影響を与えたのかも・・・。
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