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ミスター・ノーバディのodyssのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
4.3
【映画ならではの愉悦に満ちた傑作】

どんなジャンルの娯楽(肩肘ばって言えば芸術)でもそのジャンル特有の表現があり、その特有さを活かした傑作があるものですが、それでいうとこの『ミスター・ノーバディ』は映画ならではの傑作と言えるでしょう。

離婚する父と母。そのいずれについていくか、究極の選択を迫られた少年。実際の人生ではどちらか一方しか選べないけれど、もしシミュレーションのように、或いは多元世界のように、どちらの可能性も選べるとすれば・・・・。そしてその選択は何も父母の離婚のときだけではなく、人生のあらゆる局面に付きまとうのです。

この映画ではさらに、宇宙の成り立ちや、ビッグバンがなければ時間もない(物の動きは時間がなければありえない、ということは時間は物の動きがなければありえない・・・?)というような物理学の最新の知見をも織り込みながら、そもそも世界とは何なのかという哲学的な問題にまで切り込んでいるところが見ものです。

といっても、この映画は決して堅苦しくはありません。むしろ映画的な愉悦に満ちているのであり、映画を楽しみながらついでに形而上的な、いや物理学的な問題をもちょっと味わってみることができるのです。

主人公はニモ(nemo)・ノーバディという名ですが、nemoとはラテン語でnobodyの意味ですから、要するに誰でもない人間ということ。そう、時間がなければ世界はないのだし、あなたも私もそうなればnemoでしかないのですから。

登場する俳優もイケメンや美人が多い。その意味でも視覚的によくできた作品と言えるでしょう。
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