くまくま

桜桃の味のくまくまのレビュー・感想・評価

桜桃の味(1997年製作の映画)
3.0
自らの死を監修するならどうするか。華やかで壮大にとまでは言わないが、一人ぼっちで暗い穴の中へ沈んでいくのは寂しいという気持ちは多くの人も持ち合わせていると思う。
ポケットにナイフを忍ばせたように、命を握って様々な人と交渉をする男は、生きるための理由を探しているように見えるし、死ぬための理由を探しているようにも見える。遠い異国の岩肌が露出した土地は同じように自由と穏やかな空気が充満した楽園にも見えるし、途方の無い砂に囲まれた悲しみの果てに見えることもある。本編を通して見ると、人も土地も様々な表情を持っていることが改めて感じられる。小規模な舞台と少ないアングル、登場人物で人生の中で見ることができる幅広い表情を一本の映画にできるのはすごいと思った。
シンプルな演出で命が持つ魅力や危さに切り込む不思議な作品だと思う。
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