桜桃の味の作品情報・感想・評価

桜桃の味1997年製作の映画)

TA'M E GULIASS

製作国:

上映時間:98分

ジャンル:

4.0

「桜桃の味」に投稿された感想・評価

No.916[超かまってちゃんな死に方で提起する幸福の尺度と生の肯定] 80点

自殺願望を持った中年男性バディが手伝ってくれる人を探して郊外を放浪する。穴に寝てる間に土を被せてもらうという自殺方法は超かまってちゃんでムカつく方法だが、バディがジョーカーのような哲学的犯罪者と考えると腑に落ちる(適当)。要するに一昔前に流行ったマイケル・サンデルの"一人と数人どっちを殺す"みたいな論議、"金と命どっちをとる"をやりたいだけである。郊外に連れて行ったのも逃げ道をなくすため、連れてくる人間の種類が豊富なのも彼らの多様性を訴えるためである。

一般人枠としてクルド人兵士が一般的な反応=拒絶反応を示し、宗教枠としてアフガン人神学生が宗教者として頭ごなしに批判する。最後に経験者としてトルクメン人の剥製師が思いとどまった経験からバディを諭すが、結局彼の決意を前に協力する。

こんなのに100分も掛からんだろうという予想に反することなく、実際100分も掛けるのは狂気の沙汰であるが、特に退屈することもないのは本当に謎。特に人と話してない部分(ほとんどないけど)の情景の美しさは称賛に値するよ。

しかし、神学生を登場させて暗に宗教批判するのは論点すり替えな気がする。宗教者の頭ごなしな態度と盲目的なコーランへの依存は確かに問題だけど、神学生じゃなくても普通の人ならダメって言うと思うし、その根拠にコーランを使ってるだけでしょ。そこは攻めちゃ負けな気がする。

ラストは突然メタに切り替わって撮影所の風景が流れるのだが、バディの結末を宙ぶらりんにして生の賛歌に持ってくのは強引すぎて逆に好き。画質が明らかに違っていて、メタ視点を強調していたけど、考えうるバディを救う方法はこれくらいしかないんじゃないすか。
キアロスタミが目出度くパルムドールを受賞した作品。

キアロスタミの映画って何故車内の映像をただ撮っているだけでもここまで魅力的に見えるのか不思議に思う。(インタビューのような問答の際に風景が流れて見えるのが面白いからだろうか)

車内だけじゃなく車を捉えたロングショット等様々な角度から車を映していて、以前からそんな傾向にあったけど車についての映画という側面が一層強まっていた作品だった。

映っているものを味わうように眺めないと良さに気づけない(だから最初見たときはそこまで良いと思えなかった)ニッチな作品ながら、何とも形容し難い不思議な魅力が秘められており、そんな映画を低予算ながら作ってしまうキアロスタミのセンスに感服せざるを得ない。

(しかしこの映画にパルムドールを与えたのは中々大胆な選択だったと思うし、他の年なら審査員が無視してもおかしくなかった)
かなり昔、映画館で見て見知らぬおばさんに「どういう意味なんですかね?」と聞かれ「人によって捉え方が違うと思うのでご自分で考えてください」と言い放った映画。
netfilms

netfilmsの感想・評価

4.2
 アッバス・キアロスタミには大雑把に分けて2種類の映画がある。一つは少年たちの眼差しからイランの現状や在り方を問題提起した児童映画。もう一つはとりあえず車に乗った大人が、当初の目的を逸脱しながら、クライマックスへと向かうサスペンス映画である。ある自殺志願者の男が、自分の死の瞬間を最後に看取る人間を探している。久しぶりに振り返ると、ホアキン・フェニックスのようなホマユン・エルシャディという主人公の男が、ひたすら誰かを物色している。誰でも良いわけではない。お金に困っているかこちら側の頼みを聞いてくれる人間か、もっと言うと車に同乗してくれる人間なのかどうか?この3点の条件を満たす人間を車の窓から物色している。先進国においては、自殺志願者は一人で勝手に死ぬことが多い。その上で何通もの遺書を残す人間がいたり、遺書さえ残さない者もいる。自分が自殺したことを看取れというのはあまりにも無茶な話であるが、宗教的な理由から、火葬よりも土葬を好むというのは理解出来る。キリスト教徒やイスラム教徒の多い国では、今でも土葬がスタンダードである。今作の中でも主人公が「土は素晴らしい」と語る場面がある。それに対して土は人間が還る場所だと返す場面があるが、その時点では自殺を思いとどまろうとはしない。

 主人公の男は、3人の男を助手席に乗せる。1人目は農民出身のクルド人の若い兵士、2人目は採掘場の警備担当者の友人であるアフガニスタンの神学生、3人目は博物館でうずらの研究をしているトルコ人の老人である。彼ら3人に共通するのは、主人公のようにイラン人ではないこと。そしてそれぞれの職業で主人公よりも死が身近にあるということである。最初の2人との対話の中で主人公は何度も失望しながら、最終的には老人の言葉に心動かされるのだが、実はこの3人と主人公のホマユン・エルシャディは一度も顔を合わせていない。映画の中で執拗に繰り返される運転席から助手席を見るショットは、実は監督であるキアロスタミの3人への尋問だという。3人を車に乗せ、監督自らが尋問したショットと、自殺志願者の男が話しかけるショットを交互にモンタージュし、リアリズム溢れる言い合いが成立しているように見せかけて、実は用意周到に仕掛けられたキアロスタミの罠なのである。しかし今作ではもっともらしい嘘が、必ずしも興醒めするわけではない。生を突き詰めれば死が生まれ、死を突き詰めれば生がそこには生まれる。最初は貧困の中で物乞いするような人間ばかりだった車窓の風景が、トルコ人の老人に説得されてから、若いカップルや未来のある子供たちに変わる時、映画が進むべき道は自ずと決まって来る。
主人公が自殺志願者なのだけど、重い内容ではなく生と死について穏やかな気持ちで考えることができる。イランの風景も美しくそこにいるような気分にさせてくれるキアロスタミの撮る作品は素晴らしい。久々に観たけどこの「桜桃の味」は歳を重ねるごとに良さがわかってくる気がする。
渋い人生経験の話。
まだ若いからようわからへん。
セリフの深さと哲学さはわかるけど。
友達のうちはどこの方が好き...
1997年カンヌ パルム・ドール受賞作。恥ずかしながらキアロスタミ作品は本作が初鑑賞。えー残念ながら私には良さが分かりませんでした。自殺志願のおやじが車で山道を走って自殺の補助者探し。その車内の会話と、走る車を写す遠景が延々続き、睡魔との闘い。寝落ち~巻き戻しを繰り返し100分を1日で観終わらず。ラストシーンの意味も分からず悶々とするばかり。最後の老人の説教は確かにいい話だったし、自殺したくなったら思い出すかもしれないけど、風景も美しかったけど、なんか時間を無駄にした徒労感が拭い去れない。
自殺志願者の男性が人の手を借りたくて、
その辺の青年やらおじいとドライブして話をするだけの一風変わった映画。

ぐにゃぐにゃと曲がった道が印象的。
生きたいやろが!
jim

jimの感想・評価

4.5
単純なストーリーに展開もゆっくり。静かで盛り上がりのない映画。
しかしその映像美には圧倒され、会話ひとつひとつが胸にひびく。
ラストも不思議な終わり方をする。
人生とは、人の命とは何かを考えさせられる映画。

年に1回ほど、もし死にたいと言う友達に出会ったら自分はどういう言葉をかけるだろうかということを考える。

そんな私の頼りない妄想を静かに補強してくれるような作品。
深い悲しみに沈んでいる人を理解したいという時にも、すごく役に立ってくれそう。
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