青山

クワイエット・プレイスの青山のレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.7

上映最終日レイトショー滑り込みで観てきました!
たしかに「音を立てたら、即死」、ではありますが、なんとなくポスターの雰囲気から想像してたのとは全然違ってびっくりでした。
というのも、観る前はなんかインシディアスとかああいう心霊系だと思っていたんですが、なんとなんと実はモンスターパニックだったという。
しかしそれはそれで好きなので普通に面白かったです。

とにかく設定の新鮮さが凄いですよね。
目が見えなくて音で人間を察知して食うクリーチャー。そいつから逃げ延びるためにはーーーー"音を立ててはいけない"。

私は実を言うと映画が観たいから映画館に行くわけじゃないんですよ。こんなこと言うと映画ファンの方には失礼ですが、私が映画館で映画を見る目的の7割はあの美味しいキャラメルポップコーンにあるわけです。でも冷静に考えてあの量に500円は高い!そこで映画代というもっと高価な散財の「森」を作ることで、500円という「木」をその中に隠すというチェスタトン方式を採用して映画館へ行くわけです。
しかし、本作では音を立てたら、即死。それは観客の私にも言えることで、この映画を観ながら呑気にポップコーンをぼりぼりしようものなら近隣の観客にタダダダタダベキベキベキゴジュジュジュー!と言って食われちゃいますからね。恐ろしい。
なんの話だっけ。とにかく、この設定でポップコーンを食べるのも遠慮しちゃうほどの緊迫感が否応なしに出せるのはアイデアの勝利でしょうよ。
そして、音が少ない分、音でビビらせる演出もガツンと効いてて怖かったです。普段あんま音でビビらせる系好きじゃないけど、ここまでやられたら許すよ〜〜。

そして、設定についてもう一つ面白いと思ったのが、侵略系モンスターSFでありながらとてもミクロな「とある家族」だけの物語になっていること。
普通なら、クリーチャーが宇宙から襲来して人類がどんどん殺されて減っていき各国の政府があーだこーだして軍隊vsクリーチャーの大戦争の果てに残ったのは......荒れ果てた土地と、生き延びたほんの少しの人たちと、その数を圧倒的に上回る"侵略者"たち......という展開があるはずです。
......しかし、本作では、襲来〜大戦争の間は丸っ切り端折られ、いきなり荒れ果てた土地と生き延びた一家がクリーチャーをやり過ごしながら生きていくお話に。
だから、設定はSFなのに、味わいは死の恐怖から逃げる純然たるホラーという、ありそうでいてちょっと珍しい形式なのが面白かったです。

そして、そういうホラーとしての面白さとは別に家族ものとしてもお約束がきっちり入ってて面白かったです。一家のトラウマになったある出来事に対して家族の全員が自責の念を抱いていて、クリーチャーの存在だけでなくそのことが本作に大きな影を落としています。
終盤のとあるシーンでそれが一気に泣ける演出に持っていかれるのはエグいですね......。
やや類型的ではありますが、そういうドラマ部分も本作の大きな魅力だと思います。


さて一方不満点としては、着地点が見えづらいことと、いくらなんでもツッコミどころが満載なこと。
こういうホラーってだいたい「敵を殲滅する」とか、「匿ってもらうために軍の基地まで逃げる」みたいなゴールが最初から分かりやすく設定されているものですが、本作はただ漫然と逃げているんですね。その時その時に敵をやり過ごすだけで、大きな目的が見えてこない。だからちょっとメリハリに欠ける気がしました。

また、ツッコミどころ満載ってのはB級ホラーには褒め言葉ですが、こういうちょっと渋い路線を狙ってる作品であまりにツッコミどころが多いとシリアスなのかテキトーなのか分からなくなっちゃいますね。
なんせ一番はクリーチャーそんな強くなくね?っていう。もっと圧倒的な存在であってくれないと、なぜ人間が軍隊とか兵器を持ちながらこんなんにほぼ殲滅されたのか納得いかないんですよね。
あと、パパ、大事なことはちゃんと言ってよ......w


まぁとはいえ、映画館で見たらドキドキハラハラでかなり面白かったです。家で見たら点数下がりそうな作品ではありますが......。
青山

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