アルパカメタル

四月の永い夢のアルパカメタルのレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
4.8
ごめんなさい。元々「愛の小さな歴史」以来監督の大ファンで
初期の中編を含め全部見てます。
でも今作が一番好きです。本当に良かった。

前作「走れ、」で感じた押し付けがましさ(太賀くんのご飯もりもり食べるシーンは良いシーンなのだけど「ほら、泣けるやろ!」と言われる感じがしてちょっと冷めちゃったり)(最後のグライダーのシーンも蛇足だと思っていて、綺麗な絵面だけどあれがなければ良かったのにな〜ってずっと思ってた)(黒川さんの「死ぬんじゃねえぞ!」もなんか物語から浮いてるように感じてた)
それらの違和感が完全になくなっていた。それが良いと思えるか、個性がなくなったと捉えられるのかは人それぞれだと思います。

前作は監督自身の親友の死という問題から、まだ抜けきれてない状態の中でもがき苦しみその先に一筋の光を見つける話(だから屋上での太賀くんと小林くんのシーンは美しいのです)だとすれば、今作は監督自身の心境も一歩前に進んでいるようで主人公朝倉さんを見る眼差しも暖かく優しく引きの目線で撮られているように感じた。前作は内側からの作品で今作は外側から。対になってるように思う。

終盤で元彼のお母さんと主人公とのやりとりが個人的にはすごく心に響いたし、すごく泣いちゃったんだけど、そのシーン自体に全然余韻をくれなくてガンガンにシーン移りかわっていくし、これ今までだとめっちゃ余白とるところだろ!って思うと悔しいけどしてやられたなって。
ラストもここで終わって欲しい!って思った瞬間に主題歌の赤い靴の優しい音楽が流れ出したので涙が止まらなくなった。

朝倉あきさん素晴らしかったです。声が。
三浦貴大さんも無骨な昭和の銀幕スター的な立ち振る舞いが似合う良い役者さんで、この役が似合ってました。

中川監督の人を見る眼差しの優しさはこれからどれだけ売れていったとしても絶対に失われて欲しくないな。

前作からの変化込みで、傑作。わたしの中では今年ベストです。
絶対変動しません。

久々に見た映画がこの映画で良かったです