マオ

四月の永い夢のマオのレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
3.0
“ ふと目を覚ますと、私の世界は真っ白なまま
冷めない夢を彷徨うような
曖昧な春の日差しに閉ざされて
私はずっと、その四月の中にいた ”

3年前に彼を失った初海。
真っ直ぐに明るく生きる反面、空虚感と喪失感だけが身体に残る。
ああ、もうこんなにも暑かったんだと、夏の暑さを感じることや、光の眩しさに気付けることの喜び。いつまでも続く夢から覚めて、周りを見渡して、彼女の世界が少しずつ動き出していく様子の描き方というか、暗闇を照らし始める光の捉え方がやっぱりすごく好きだなと思った。
“生きている” を実感する。

失い続ける中で本当の自分自信を発見していく、
この言葉にハッとさせられた。
好き嫌い分かれるだろうけど、柔らかな言葉たちが、美しい声と共に静かに身体に溶けこんでいくのが心地よい。

心踊る出来事があった時に聞く好きな歌って最高だよね。浴衣でるんるんと踊る初海がすごく美しかった。
「志熊さんは不思議な人だ。」
この台詞とこの時の表情がなぜかすごく印象的。
ラストがすごく好きだった。

季節感や空気感、映像越しに温度を感じる。
昭和感漂う家や小物、銭湯や手拭い染めなどの古き良き日本特有の繊細で丁寧な部分が本当に魅力的で素敵。

「静かな雨」で中川監督の考え方や表現に魅了されたので、ずっと気になってたこちらから鑑賞。
「わたしは光をにぎっている」も後日見に行きます。
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