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劇場版 フリクリ オルタナのmのレビュー・感想・評価

劇場版 フリクリ オルタナ(2018年製作の映画)
3.9
最初に言っておくと自分は前作「フリクリ」の大ファンなので、申し訳ないがこの作品を公平な視点で見る事は難しい。

まず驚いたのがこれが135分の長編映画ではなく、1話23分程のエピソードを6話ただ繋げただけの物である事だった(だから1話終わる度に暗転して「Next episode」とテロップが出る)。まあ前作もOVAで全6話だからそれに合わせたという事なのか?
最初から長編映画としては作られてないからそういうものなんですと言われればそれまでだが、こうした形式で劇場で通して観るのがまずキツかった。


作品自体は主役の女の子4人組の人物造形が変な媚びも無く個性豊かで悪くなくて(というかむしろ「サニー 強い気持ち・強い愛」とかと比べると全然こっちの方が良かった)、それなりに好感を持って観ていた・・・が、しかし今ひとつ抜け切らず、佳作レベルで終わっている。
これが普通の新作作品ならそれでも良いが、残念ながらこれはあの「フリクリ」の続編と銘打たれている代物なので、そうとなるとこれでは許されない。

確かに「フリクリ」の根っこはこういう思春期の子供達の心をアッパーかつ繊細に掬い取っていく感じだったなと思うが、なんというか良くも悪くもより『普通』になった。『ハル子が大暴れして頭からギター出てきてベスパ乗ってthe pillows流せばフリクリっぽくなるだろ?』的なナメた感じでは全くないのだが、なにかある意味生真面目で優等生すぎたのかもしれない。特に演出面にアナーキーさが全く見られないのは残念(パロディ演出は普通に滑っている)。

自分が「フリクリ」をずっと好きでいるのはアナーキーさよりも子供達の心根を描く部分で、前作はその子供達の設定が絶妙にひねくれていて一般的ではなかったのが強く印象に残っていた。特に主人公の少年の兄に捨てられた彼女であるマミ美、今回続編が作られると聞いた時にカッコよくカメラマンとして自立したマミ美の今を観てみたいと思ったのだが・・
今回登場する女子4人はそのうち3人は結構定番の悩みを抱えていて、それはそれで良いしそのお陰で今作はより入口の広い普遍的な物になったのかもしれないが、とはいえやはりこれは「フリクリ」の続編だと考えるとそれで良いのかな?失った物があるのでは?と思ってしまう。

そう、前作におけるアナーキーさやひねくれは少年少女の成長を描く際のある種の『照れ隠し』にもなっていて、それらが薄くなってしまった結果今作はその本質が浮き彫りになり過ぎてしまったように思う。そして「フリクリ」を「フリクリ」たらしめていた個性も薄まってしまった。

今回ショックだったのはpillowsの曲の使い方が下手だった事で、特に「LAST DINOSAUR」が全然盛り上がらない酷い使われ方をされていたのは非常に辛い。


ただ、女の子達の友情を茶化したり邪推したりせず正面切って誠実に描いている事、そしてちょっとビターに終わる事は美点だと思うので評価したい。それに合わせてpillowsの新エンディング曲もビターな感じの曲で良い・・と思いきや、pillowsの山中さんのインタビューを読んだら今回の続編のストーリーを知らされなかったので前作の主人公の現在を想像して書いた曲だったらしく、本当に真摯に続編を作ろうとしたスタッフはpillowsだけだったのでは・・と思ってしまった。
あと前作よりも終末感が目の前にある事、そこは確かに今を捉えている。
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