みおこし

イナゴの日のみおこしのレビュー・感想・評価

イナゴの日(1975年製作の映画)
3.8
ハリウッド映画史に残る問題作ということで、ものすごーーーく気になっていたのですが、ついにDVDを購入しちゃいました。でももう重すぎて二度と観ない自信がある!(爆笑)噂通りの超ド級トンデモ映画でした。

舞台は1938年のハリウッド。大学を卒業し、大手映画会社パラマウントの美術部に就職したトッドは、女優を目指してエキストラとして働いているフェイと知り合う。トッドはフェイに惹かれるが、彼女はトッドと本気で付き合うつもりはない。そんなフェイはひょんなことから冴えない年上男性ホーマーと出会うのだが…。

戦前のハリウッドを舞台に、3人の男女を中心に人間のエゴや愚かさを描いた衝撃作。一応”アメリカン・ニューシネマ”の1本として扱われるらしい(ちなみに監督は『真夜中のカーボーイ』のジョン・ジュレンジャー)。
主人公の3人は何らかの大きな問題や葛藤を抱えています。フェイとトッドは映画の都ハリウッドでの成功を求めて必死に働いているがなかなか芽は出ないうえに会社の理不尽な待遇に不満を募らせているし、ホーマーはかつての失恋を引きずりながら生来の不器用さもあってか淡々とした日々を送るのみ。思い描いていた理想には程遠く、自分を押し殺して生きているうちに、彼らの胸の奥底にあるプライドや欲望、他人への攻撃心などが徐々に高まり…。特にカレン・ブラック扮するヒロインのフェイはそれが顕著に表れ、ホーマーに対して辛く当たるようになっていきます。それに対してどうすることもできずさらに悩むホーマー、そしてフェイが自分のものにならずにイライラするトッド。
全編に渡って、この3人の鬱屈した感情だったり、30年代当時のアメリカの閉そく感だったりがひしひしと伝わってきて、観ながら一緒に気分だだ下がり…。”虚構”とも言えるハリウッドのきらびやかで豪華な世界観(ファッションや調度品など)と、3人が直面している”現実”とのコントラストも見事でした。

この閉そく感を演出するためなのか何ともですが、途中で挟まれる闘鶏のシーン(グロ注意)やフェイの父ハリーにまつわるエピソードのあのヒステリックなシーンなど、嫌悪感を煽る不気味な演出が多いのもまたトラウマ。ちなみにハリー役のバージェス・メレディスは本作でオスカーにノミネートされています。
しかし、なんといってもラスト20分間。個人的に一生忘れられないレベルの、人間の恐ろしさが詰まった衝撃のラスト。タイトルの”イナゴ”とはこのことだったのか…。観終わった今も目に焼き付いて離れないショッキングな内容でした。
直接的にも間接的にも、不気味でグロい映画が苦手な方にはお勧めしないませんが、アメリカン・ニューシネマの秀作の1本としてぜひこの驚異の映像体験、必見です!!
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