櫻イミト

イナゴの日の櫻イミトのレビュー・感想・評価

イナゴの日(1975年製作の映画)
3.0
「真夜中のカーボーイ」(1969)のジョン・シュレンジャー監督が1930年代後半のハリウッドを舞台に赤裸々な人間群像を描く。

1938年。映画会社パラマウントの美術部に就職することになったトッドはハリウッドの安アパートで新生活を始める。向かいには元ボードビリアンの洗剤売りハリーと、映画スターを夢見る娘フェイ(カレン・ブラック)が住んでいた。トッドはフェイに恋をするが上昇志向で打算的な彼女は受け入れない。しかし彼女は、近所に越してきた内気な経理士ホーマー(ドナルド・サザーランド)と接近するのだった。。。

貧しさと虚栄が隣り合わのハリウッドの街の群像劇。明確なストーリーラインがあるわけでなく、持たざる者たちのアンニュイな日々がスケッチされる。そのエピソードの一つ一つは暗喩めいていて文学性が漂うが全ては解釈できない。それが最後には暴発し”イナゴの日”を迎えることになる。登場人物の全員が冴えない感じだが、それが当時のハリウッド周辺の空気感をリアルに描き出しているようにも感じられ退屈はしなかった。

第二次世界大戦の直前のアメリカ。少し火を付ければ大爆発しそうな社会ストレスの充満を現わそうとしているように思えた。

・冒頭、巨大HOLLYWOODll看板の下で観光客がペグ・エントウィッスルの飛び降り自殺(1932)の案内を聞いている。

・フェイがエキストラで出演した映画を観に行ったシーンでスクリーンに投影されているのは「アリババ女の都へ行く」(1937)。

・ラストシーンは「海賊」(1938)のプレミア上映会の設定。

・「エルマー・ガントリー」(1960)の題材となったキリスト教伝道集会のシーンがあった。同作は1920年代、本作は1930年代後半の設定で、ショーアップの仕方が進化していることがわかる。
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