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トップガン マーヴェリックのharunomaのレビュー・感想・評価

4.7
トップガン マーヴェリック
これは歴史である、続編ではない西部劇。ヴァル・キルマーのこともあり、オリジナルは見ておこうと思ったら、正解だった。
まさかトップガンのトニー・スコットをジョセフ・コシンスキーが引き継ぐ、しかも有り得そうもない顔たち choker shot の信頼において。
とりあえずトム・クルーズの名前がピート(デヴィッド・ロウリー)だとは言っておこう。

ただ正しい、アメリカ映画としか言いようがない命懸けの楽天性(反転、巧妙に、ならず者国家として顔のない、本当に黒いヘルメットで顔を消している架空の敵はいかがなものか)。JJエイブラムスより多く、スピルバーグより少なく偉い。
前作かトニーへのオマージュかは知らないが、のっけからフィルムルックの細かいモンタージュで映される空母、戦闘機のショットは、さもありなん。
冒頭のバイクからして活劇であって、まさかマッハ10で泣くとも思わず。(法が正しくないとき)、微笑みと軽快さを持つ共同体は結束し前進する、例外状態、こと、において、未知の愛を求める息、飛行は(たとえ宇宙にあってはその景色は孤独かもしれないが)、善なる運動として知覚される。
このあたりのアバンタイトルな導入の飛行は、SFの人からして、インターステラー、2009スター・トレック、アルマゲドン(はラストか)、映像の通信(対話)はないのだが、近しいものを感じた。
ジェニファー・コネリーの、バーでのトップガンメンバーがすでに一堂に会する登場シーンの演出は面白く、この軽快で的確で、物語の主題を提示する(トニーの映像すら挟まれる、この回想の、想起の映像をどうみればよいのか)身体と音楽の交歓は、ハワード・ホークスと呼ぶのは、濱口のように軽い想像なのだろうか。
危惧していた戦闘機のシーンは、全部ガラス張りのコックピットにより空中戦の追いかけっこが可能になり、晴天360度旋回飛行と、見る見られる choker shot の顔たち(モニターとアニメーションのシュミレーション映像も含め)(それでもマスクはしているのだが)に賭けている戦略はおもしろく、清々しくすらある。

あらゆる死者と、トラウマ的記憶の共同体のただなかで、カットが変われば、波打ち際のアメフトで打ち解け、戦闘へ行く直前の汗と動揺もリアルだ。これで終わりかと思えば、ミッションインが始まり(そもそもスパイアクションになっていないか)いきなり殴りかかる(押し倒す)二人は、バディとなっていて、師弟関係ではなく、この二人のホークス具合が俄然気になりだしたところで、偉大なる反復を繰り返し、トップガンチームは帰還する。

十分素晴らしかった。しかしどうだろう、クワイエット・プレイスのジョン・クラシンスキー、そのエミリー・ブラントの命がけの美、その変貌に比べれば、驚きは、優秀な出来ということでしかない。オブリビオンは大好きだが、どこかで、超越的なでたらめな力がないために、願いも生の痕跡も残しきれない、映っているもの以上に、ここには秘められた秘密はない。トム・クルーズ自身に秘密はない。
それにしてもトム・クルーズの歴史を見るということが、いまのところ最良の選択の一つであることは、誰もが合意可能な目に見える接点であることは、確かだ。
I Ain't Worried.
You're Where You Belong.

2023.12.24
二度目の劇場鑑賞はやはり思ったより全然よくない。Toho日比谷
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