はるかわ

寝ても覚めてものはるかわのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
5.0
床に寝そべる亮平の靴下を朝子が脱がせるシーン。
濱口作品の特徴の一つはセックスシーンがないこと。『寝ても覚めても』でもキスシーンはたくさんあるけどセックスはない。きっと映画の中でのセックスは強すぎて、日常の描写になじみづらい。そのかわりに、濱口作品では靴下を脱がせる的なシーンが入る。靴下を脱がせる行為には、同じ風呂に入り、並んで歯を磨き、一緒に眠り、おはようのキスをして、気を許し合って、共に暮らす2人の関係性がすべて含まれている。セックスは、そんな親密な生活の一つの要素に過ぎない。

麦と北上した朝子は、朝、目覚めのキスをされ、引き返すことを決める。麦のキスは、長い間、亮平と交わしてきたキスとは何かが決定的に違う。朝子は亮平と過ごした年月の方を選んで車を降りる。

ラストはこれ以上ないくらい美しさ。晴れ間が走る2人を追いかけるロング。それまでの完璧な信頼には戻れない2人が、それでもまた、新しい生活を始める。
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